第53話 此処は何処なのだ?

 




 ◇ ◆ アルティナ視点 ◆ ◇




「それで、首尾はどうなった?」


「はい、少し問題はありましたが勇者召喚は阻止されました」


「そうか...」



 そう言って大司教様は椅子に深くもたれかかり、深く溜息をつきました。



「予言の巫女は行方知れずのままか?」


「はい、伝えねばならない事がある...と。それ以降の足取りは依然掴めていません」


「はぁ......相変わらずあの方は......。しかし勇者召喚を阻止したと言うのに、魔王は復活してしまったか」


「...はい」


「そうか、予言を多少変えた所で無駄だと言うのか...」



 予言...。


『 魔により召喚されし勇者

  生贄に魔王が天より降り立つ

  そして神が堕とされる 』


 ある日教会に現れた予言の巫女様が、そう言葉を残して行かれました。


 何時もは貧しい地域を周られているみたいなのですが、大災害が起こる前には何時も唐突に教会へと現れ、予言を告げて行かれます。


 普段通りならばこの言葉は直ぐに外部へと伝えられ、避難誘導や対策が行われるのですが...。

 勇者召喚は『教団』の役目。

 それが魔族によって汚されているとなると恥になる。


 その為、内密に教団のみで予言の調査が行われたのですが。


 まさか枢機卿が入れ替わっていたとは...。

 

 しかも一足遅く勇者召喚の許可が降りてしまっており、儀式のため司祭が送られていました。

 そこで私がその司祭と入れ替わり、召喚を失敗と言うかたちで阻止するはずでしたが...。


 魔族により書き換えられた召喚陣は、何故か魔力を正常に通さなかったはずなのに発動してしまい......。



「それで...この報告書にあるのは事実なのか?」


「はい...」


「はぁ......竜か......」



 発動した召喚陣から現れたのはエルフの魔導師...だと思われていたのですが。

 まさか竜が变化した姿だったとは思いませんでした。



「魔王の復活に竜の出現。勇者が生贄にされる事態は避けられたが、状況は好転するどころか悪化した可能性すらある」


「いえ、竜は友好的だと思われ...「思われるではいかんのだ」」


「竜は知性ある高位の存在。油断は出来ん」


「はい...」



 私の印象では裏表の無いお方の様でしたが、やはり大司教様の言う通り裏があるのでしょうか?



「しかも見失うとは...。今、千里眼に探させているが、問題が起きる前に確保しなければ......。アルティナ」


「はい」


「姿を正確に把握しているのは御前とケイトだけだ。二人は千里眼と協力し、竜を確保するのだ」


「わかりました」


「戦力が必要な場合は惜しまない、必要に慣れば私に報告するように。下がっていいぞ」


「失礼します」


  --パタン


 さて、それでは夕飯の仕込みをして、避難してきている子ども達に食べさせて。

 寝かし付けてから千里眼様の所へ...。


  --あっ


 洗濯物も取り込んで片付けないと......。

 顔を出すのはそれからですね。

 

 確か千里眼のフィー様は甘味が好きだったので、御土産に街で買っていきましょう。





 ◆ ◇ レムリア視点 ◇ ◆

 


 


「んぉぉっ」



 ポータルが起動して、何処かに出たのだっ!


 レイナは何処に出るかはわからんと言っておったが。


  --キョロ

   --キョロ


 どうやら周囲は安全みたいだなっ。

 だが、レイナとはハグレてしまったみたいなのだ。


 しかし、此処は随分と見晴らしが.......。



「ぬぉっ!」



 足元に地面が無いではないかっ!?

 これは、とっても予想外な場所に出てビックリなのだ!


 しかし妾には魔法があるからなっ、こうやってゆっくりと着地すれば問題ないのだ。

 さて、それじゃあ地面に降りたら周囲を探索だなっ。


 まずは街を探して、寝る場所を確保せねばな。

 それから、銀子に食料を食べられてしまったからな、それの補充も...。

 後、レイナも近くに飛ばされておるかもしれんし...。


  --ズボボボッ


「ぬががっ」



 ゆっ、雪!?


 雪ではないかっ!!


 足を付いて魔法を切った瞬間、雪の中にめり込んでしまったのだ。

 あっ、頭まで埋まって、息が!



「んぅ、レムちゃ...冷たい」


「おっ、おぉ銀子、起きたのか」


「んっ」


「ちょっ、ちょっと待ってるのだ。今、雪を吹き飛ばすからなっ」


  --火壁(ファイアウォール)


 この魔法ならしばらく火が持続するからな。

 これで雪を溶かすのだ...。



「ぬあぁぁぁっ!」



 水っ、水がっ。今度は水がっ!! ぬのわぁぁぁぁぁ!!




 

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