第52話 魔王城...かっ、カッコイイのだ!!

 

 


「ギルドマスター」


「ん? 魔力充填までまだかかるから待ってろ」


「違うのだ」


「あん? ならなんだ?」


「外の様子が変なのだ」


「は? 外だと...?」


「うむ、見に行った方が良いと思うのだ」



 あの女の魔法だからな、きっと碌な事になってないと思うのだ。



「ったく、いったいどうなってやがんだ。アンデッドにドラゴンに魔族の捕食。今度はなんだ?」


「んむ、妾にも何が起こっておるのかは分からんのだが、空をあの女の魔力が覆って行ってる感じがするのだ」


「おいちょっとまて...。あの女?」


「うむ、角の生えた気持ち悪い喋り方する女なのだ」


「角...だと? いや、それよりも『気持ち悪い喋り方』?」


「う、うむ」



 ど、どうしたのだ?

 急にギルドマスターの様子が変わったのだ。



「おいヒラヒラ、そいつはもしかしてコレくらいの長さの角が額から1本だけ生えてて、胸がこう...でかいヤツか?」


「む?」



 ギルドマスターが手で肩幅くらいの大きさを示して聞いて来た。


 んー......。



「そうだな、そんなだったと思うのだ」


「まさかゼシェラ......」


「んむ?」



 ギルドマスターが小さく知らない言葉を呟いたのだが、ちょっと意味がわからんかったのだ。



「なぁ『ゼシェラ』とは、一体何なのだ?」


「あ、ああ...。魔王の......って、ヒラヒラ。オマエ...この世界の魔王だかって話なんて分かんねぇだろ」


「うむ、ダンジョンに篭ってるのとは違うのだな?」


「ダンジョン? そんな所に魔王なんていねぇよ」


「そうなのか......」



 やはり『ドラゴンテイルズ』の世界とは違うのだな...。



「知らねぇなら全部説明してる時間はねぇ、今はチラッとだけ外を見たら、速攻でこの街から離脱するぞっ!」


「むっ? 逃げるのか?」


「ああ、オマエの見た女が本当にアイツなら、速攻で逃げないとマズイ」


「そっ、そうなのか? なぁギルドマスター」

「レイナだ」


「んむ?」



 レッ、レイナ? な、何のことなのだ?



「私の名前だ。もう此処のギルドはねぇし、ギルドマスターって呼ぶのは辞めろ。嫌味に聞こえるぞ......」


「うっ、うむ、わかったのだ」



 そうか、ギルドが無くなってしまったからな。次からはレイナと呼べばいいのだな。



「それでだな...レイナ」

「なんだ?」


「結界が何かに攻撃されておるが、大丈夫なのか?」


「なに?」






    --オォォォオォォォ

  --オォォオォォォン


     --ガキン


   --オォォオオン

     --グォォォォン


  --ガキン



 ......。


 ...。


 何か沢山のアンデッドが、結界を取り囲んで剣で叩いているのだ。



「おいヒラヒラ、ありゃなんだ?」


「うむ、アンデッドだと思うのだが」


「いや、そりゃ見たらわかるが、なんだあの悪趣味な金色の仮面は」


「なっ......なにっ? キラキラしておってオシャレではないかっ!?」


「いや...まぁ、趣味は人それぞれだが......。問題はそこじゃなくてだな、私はあんなヤツ見た事ねぇんだが」


「妾はあるぞ」


「なに?」



 これが此処にいるなら、あのでっかいのも...。


  --む?



「おいヒラヒラ、何処で...」

「ギルド......レイナ、空を見るのだっ!」


「おいおいおい、あれは...」



 空が白くなっていくのだ。


 あれは...空間魔法だな。

 ふむ、この世界の空の部分を、別の空間に繋げておるのか?



「そんな......」


「ん? どうしたのだ?」



 ギルドマス......むぅ...慣れないのだ。


 ええと、レイナの様子が変なのだ。


 空を見つめたまま、呆然としているのだが......。



「だ、大丈夫か?」


「あ...ああ」



 むぅ......。なんだか目に見えて大丈夫じゃなさそうなのだが...。



「ヒラヒラ、行くぞ」


「んむ?」


「そろそろポータルの準備が出来てる。とっとと此処を離れるぞ」


「う、うむ...わかったのだ」



  --ピシッ


 ん?


    --ピシ

  --ピシッ


 ぬぉっ?


 そ、空が...。

 空にひびが入っていくのだ。



「クソッ、急ぐぞヒラヒラ」


「ちょっと待つのだ」


「おい、なに言って」



   --ガシャァァァン

  --ドゴッ



「うむ、コレが落ちてくるのが見えたのだ」

「なっ......」


「そのまま進んでおったら踏まれておったぞ」


「......おい、なんだコイツ」


「うむ、妾も何かは知らんのだ」



 だが、やはり此処に来ておったのだな。

 相変わらずオシャレなのだ...。


 あの時はあの女に邪魔されてしまったが、今度こそ犬の金仮面を手に入れるのだっ!!


   --かえ...せ


    --月の巫女...


「お、おい、なにか言ってるぞ」


「うむ、前も何か言っておったが意味はわからんのだ」


  --グォオォォォォォォォッ


 むっ?

 戦闘開始だなっ!!


 コイツは仮面を剥がせば多分たおせるからなっ、楽勝なのだっ!


 それじゃ早速...。


  --確認(チェック)


   --引寄(プル)


 ......。



  --引寄(プル)


 ...?


   --引寄(プル)!

    --引寄(プル)!!


「...お、おいっ?」


「ぬぉぉぉぉおぉぉぉっ」



 結界に...。



「結界の上に穴が空いて、また魔法が使えなくなっておるのだっ!!」

「逃げるぞ」


「ぬぉおっ!」



 レイナが妾の腕を引っ張って走り出したのだ。


 う、うむ、そうだな。

 今は逃げるのだっ!!


   --ガッシャァァァァァン


 ふぉおおぉぉぉっ!!



「レッ、レイナ! 空が割れたぞ!! あれは何なのだ!?」


「まずいまずいまずい」


「なぁ、何か出てきたぞ! あれは...空飛ぶ城か!?」



 かっ...カッコイイのだ!!



「馬鹿っ、アレは魔王城だ!!」


「おお、この世界では魔王はあんなカッコイイ場所に住んでおるのかっ!?」

「良いから黙って走れ、結界が壊れたら私も長くもたん」


  --グォオォォォォォォン


「追ってきたのだ」

「わかってる!」


   --ガゴォ

  --ガラガラガラガラ


 お、おお。

 建物に逃げ込んだのに追ってきたのだ。



「な、なぁ、入り口が壊されてしまったぞ」

「それもわかってる!」


「そ、そうか」


「飛び降りろ!」

「ぬぉぉっ!」



 階段に差し掛かったら、レイナに引っ張られて一気に下まで飛び降りたのだ。


 そのままポータルの所まで走って行った...のだが。



「ちょっ、ちょっと待つのだ」



 ポータルの魔法陣から魔力が全部消し飛んでしまっておるぞっ!?



「あれは大丈夫なのか!?」


「大丈夫なわけないだろ!! 結界が壊されたせいで補充した魔力が全部持っていかれた」


「なっ...。どうすれば良いのだ!?」


「くっ...仕方ねぇ。ヒラヒラ、ポータルのコアを壊せ」


「むっ?」


「何処に飛ばされるかわかんねぇが、あれを壊したら魔力が発生して何処かに飛べる」


「ど、何処かって何処なのだ?」


「何処かは何処かだっ!?」


  --グォオオォォォ


    --ガゴッ

  --ガラガラ


     --ガゴォ

   --ガラガラ...


「クソ、来やがった。早く壊せ!!」


「こ、この魔方陣の真ん中のやつだな」


「そうだ」



 む、むぅ。

 何処に行くか分からんのは困るのだが、もう考えてる時間はなさそうなのだ。


 し、仕方ないのだ。



「ぬっ、ぬぉぉぉおぉぉぉっ」


  --パリン




  

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