第51話 吹っ飛んでしまったのだ......

 




「おーい、どこに居るのだぁ~?」


  --ズズ

   --ズリズリ


「おーい、どこに行ってしまったのだぁぁ~?」


    --ズリズリ

  --ズズリ


 ぬぅぅ......。

 妾を置いてギルドマスターが何処かへ行ってしまったのだ。



「むー...確か地下とか言っておったか?」



 それなら階段を探せば良いのだな?


  --ふむむ...


 取り敢えずギルドマスターの行った方向に進んでみるとするか。



「...んむ?」



 何だか礼拝堂っぽい所に来てしまったぞ?



「んんー......」


  --キョロ

   --キョロ


 行けそうな所は隅っこにあるあの扉だけだな...。



「成る程、きっとあの先に階段があるのだなっ!」


   --ズリズリ

  --ズリズリ



   --バタンッ



 ......。


 むむむぅ...。

 扉の先は階段ではなかったのだ。


 何か広い廊下になっておって、壁に扉が10個くらい並んでおるのだが。

 これ、全部開けて地下への階段を探さねばならんのか?


 ......。


 ...。



「あっ...」



 そっ、そうなのだっ。

 今なら魔法が使えるではないかっ!! 魔法で探せば解決ではないかっ!?


 ずっと使えなかったからなっ、完全に失念しておったのだ...。



「ぬああぁっ!!」



 そうだっ...そうではないかっ!

 魔法が使えるのだから、もうこんなものを慎重に引っ張る必要など無いではないか!?


 ...。


  --ガクッ


 いったい妾は何をやっておったのだ...?


 ......。


 妾...バカではないのだぞ?

 バカではないのだ...。


 ......。


 ...。


 よっ、よしっ。

 天才的にも魔法が使える事に気がついたからには、早速魔法を使っていかねばならんなっ!


 うむうむっ!


 さて、それじゃあ早速...。


  --探知(サーチ)!


 そうそう、これなのだっ!

 やっぱり妾はこうでなければならんのだっ!!


 ふむふむ...それでギルドマスターは...。

 右側の2つ目の扉の先だなっ!


 それじゃあ皆を魔法で浮かせて連れてくのだっ。

 どの魔法がよいかなぁ~。

 折角久々に魔法が使えるのだから、ちょっと格好良い感じのが良いなっ。



「よしっ 決めたのだっ!」



 重力魔法からの風魔法の同時発動で行くぞっ!


 反重力(アンチグラビティ)が良いか?

 いや、反重力(アンチグラビティ)は上に引っ張られすぎるからなっ。


 浮遊(レビテーション)の方なら床から一定距離を維持して浮くからなっ。そっちにするのだ!


 それから...横に高速移動するための風魔法だなっ。

 

 普通のウィンドで飛ばしても良いのだが、飛行(フライ)の魔法の方が高速だし風のシールドも付いておるからなっ。

 そっちの方がきっと派手で格好良いのだっ!!


  --浮遊(レビテーション)


 そしてっ!


  --飛行(フライ)


 準備完了なのだっ!


 それでは2つ目の扉を目指して...。



「出発なのだっ!」

  --ビュッ

    --ゴガァッ


   --ガッ

     --ゴッ


  --ガシャン...


      --ドッ...


 ......。


 ...。




「ふっ、吹っ飛んで行ってしまったのだ...」



 まっ、まずいぞっ。

 久々でつい力が入りすぎてしまったのだ...。


 皆を乗せた盾が扉を突き破って。

 高速で階段を落ちて行ってしまったぞ。



「おっ、おいっ 何だ今のは?」



 ぬっ、ぬぉっ。

 ギルドマスターの声が階段の下から聞こえたのだ...。



「おいコラ ヒラヒラぁぁ!」


「なっ、何なのだー......?」


「テメェ、階段から落としやがったな」


「ちっ、違うのだ」


「違わねぇよ、おい、どうやったらこうなるんだ? ヒラヒラちょっとこっち来い」


「......」



 うぅ、やってしまったのだ。

 ど、どうしよう、呼ばれておるのだが、出来れば行きたくないのだ。 



「ヒラヒラ、早く来やがれ」



 し、仕方ないのだ...。



「分かったのだー......」



 し、しかし、いったいどうなったのだ?


   --カッ

  --カッ

     --カッ


 ぬぁぁ......。

 見事に突き刺さっておるのだ。


 飛行(フライ)についてるシールドのおかげで無事ではある様だが...。

 盾が床に突き刺さっていて、どうやら皆が投げ出されてしまったみたいだな。


 浮遊(レビテーション)が掛かっておったのに、どうしてこうなってしまったのだ?


 ......。


 そうかっ...。

 わかったのだっ!!


 浮遊(レビテーション)だと階段と水平になってしまうからなっ。

 斜めになって床に刺さってしまったのだなっ。



「うむ...」


「『うむ...』じゃねーよ、何て事しやがる」


「い、いや、ちゃんと飛行(フライ)のシールドが付いておったから大丈夫なのだ」


「そうじゃねぇ、下に私が居たら死んでただろうが!!」


「...あっ」



 そ、それは考えてなかったのだ...。



「私の真後ろに突き刺さったんだぞ? お前は私を殺したいのか!? あぁっ!?」


「い、いや...その...ごめんなさいなのだ...」


「あー...もう。これ以上面倒事を起こすなよ! いいな!?」


「う...うむ」


「はぁ...。それじゃあ、こいつらの魔力を回復させるから、そこに並べろ」


「わかったのだっ」



 それじゃあ魔法を使って...。



「魔法は使うなよ」


「う、うむ」



 し、仕方ないのだ...。

 また『そぉ~っと』で頑張るのだ。



「よし、じゃあ私が魔力を入れるから、オマエは...あー......。ジッとしてろ」


「むっ? 魔力を入れるだけなら妾にも...」

「オマエはなんもすんな! いいか? わかったか!?」


「わっ、わかったのだ...」



 怒鳴らなくても良いではないか...。


 ぬーん......。

 ギルドマスターが魔力を入れ始めたのだー。


 暇なのだー。



「おい、ヒラヒラ」



 しかし、今日は大変だったのだ...。



「おいヒラヒラ!」

「ぬぉっ なっ、何なのだ?」


「おまえ、その背負ってるのは大丈夫なのか?」


「むっ?」



 ぬぉっ!?

 銀子を背負ってたの忘れてたのだっ!?



「えーっと......うむ。銀子の魔力は減って無いみたいなのだ」


「銀子っていうのか? スラムの逃げ遅れか...? まぁ良い。取り敢えず先に意識の無いやつをポータルに運ぶ、手伝え」


「うっ、うむっ」



 えーっと...。



「ポータルというのは何処にあるのだ?」


「ああ、隣の部屋だ」





 さて、ギルドマスターに言われて皆を運んだのだが。

 ほほう...。これがポータルか。


 ふむふむ...。

 どうやら転移系の魔法陣みたいだなっ。


 一部分しか読み取れんが、形式がドラゴンテイルズと似ておるのだ。



「それじゃあヒラヒラ、魔石の残量が無いせいで同時に送れる人数が限られてる

 私とオマエとその背中のヤツは次になるが、直ぐに出れるように準備はしとけよ」


「了解なのだっ!」



 と、言っても...特に準備は必要ないがなっ。


  --ひゅぉぉおっ

     --シュンッ


 おぉっ?


 魔法陣が光って、無事にみんな飛んでいったのだっ。

 さて、次は妾達の番だなっ。


 ふむふむ...。

 ギルドマスターが何やらゴソゴソしておるが、いったい何をしておるのだ?


 ほほう...そこに魔石が入るのか。

 それで、そこから魔法陣に魔力が流れるのだな。


 しかし魔力導体はどうなっておるのだ?

 興味深いのだ......。


 ......。


 ん?


 外の様子が......。




 

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