第40話 ふふっ...うふふふふっ

 



 ◇ ◆ 鬼女視点 ◇ ◆



「この杖...ほんとうに厄介だわぁ...」


  --んー......


 結構贄も使ったちゃったのよねぇ...。

 これ以上やっても無駄かしら?


 杖を護る結界を変質させて破壊しようと思ったんだけど...この方法じゃ無理なのかしら?



「はぁ...」



 此処までの予定はかなり順調だったんだけど、ほんと...あの女はいつも...いつもいつもっ......私の邪魔をしてくる。



「ああっ、思い出しただけでもムカムカくるっ!!」



 不老不死を餌に国王を此方側に引き込むのは簡単だった。

 教団の上級神官を洗脳するのには少し時間がかかったけど、勇者召喚をこの城で行わせるのはうまく行ったし。

 予定は順調だったはずなのよ...。


 けど...なぜかしら。

 そこから先が失敗続きなのよねぇ...。


 ちゃあんと破壊を振りまいてくれそうな怪物が出るように、勇者召喚陣をいじったはずなんだけど。何故かひ弱なエルフなんかが召喚されちゃうし...。


 本当はその怪物に街を破壊させる予定が、無駄に予定が狂ったせいで審問官とかいう煩い連中もきちゃったし...。



「まぁ...」



 わざわざ召喚陣を暴走させるのに必要な贄が向こうから来てくれたおかげで助かっちゃったんだけど。



「けど、いまいち魔素が増えなかったのよねぇ...」



 そのせいでアレまで出して街を破壊する事になっちゃったし。

 途中でやけに強いのに邪魔されちゃったし...。


 そういえばあの玩具、結構強かったのに殺してもあまり魔素が増えなかったのよねぇ...。



「なんでかしら?」



 もうちょっとなのに...。もどかしいわねぇ...。

 もっともっと人が死んで、もっともっと魔物が死ねば、予定通りに魔素がたまるんだけど。


 思ったより冒険者ギルドの連中が頑張ってるのよねぇ...。


  --そうねぇ...


 ......。


 約束しちゃったし、王様に不死をあげようかしら?


 ...。

 ...そうね。

 そうよっ、それがいいわぁ!!


 不死王(アンデッドキング)に街を襲わせれば、どちらが倒されても予定通りの魔素がたまるじゃない。

 冒険者ギルドの連中も不死王(アンデッドキング)相手ならそう簡単にはいかないでしょうしねぇ...。



「ふふ...ふふふふふっ」



 そしたらいよいよっ、.......いよいよ魔王様を助け出せるっ!!


 その為には魔王様の封印を維持してるこの杖が邪魔なのよねぇ...。



「それに...」



 この杖さえ手に入れば、あの女を異空間から引きずり出してやれるのよ...。

 ああ、そしたらぁ、ようやくこの手であの清ました顔を八つ裂きにできるのよねぇ...。



「はぁ......」


  --ゾクゾクゾクッ


 アッ、想像しただけでイッちやいそぅ...。


 眼球を抉り出して、泣き叫ぶ顔をズタズタにして、髪の毛を引きちぎって踏みつけてっ......。

 アァッ......。


 ......。


 ......ふぅ...。


 ...。



「あぁ...」



 ほんと、どうしようかしらコレ...?


 最初は力押しで何とか出来る予定だったのに、まさか結界を無理やり壊すと杖が壊れる仕掛けがあるなんて思ってもみなかったわ...。


 まぁ、ただ壊れるだけならまだ良いのだけれど...。壊れる時の魔力を使って魔王様にダメージが行くようにしてあるのが本当に嫌らしい。

 復活してもすぐに倒されるようにするだなんて、あの女の考える事は何時も...何時だって卑怯なのよ...。


  --はぁ...


「いい案が思いつかないし、先に不死王(アンデッドキング)を作って来ようかしら?」



 そうね、気分転換も必要よねぇ。



  -んんー......


 まぁ、そんな感じで不死王(アンデッドキング)を作った後に、精神を狂わせて街中に解き放って来たんだけどぉ...。



「思ったより気分転換にならなかったわね...」



 やっぱり何も思い浮かばなかったわ。

 いっそ、床ごと抉り取ってみようかしら?


 まぁ、どうせ抉ってもあの位置からは動かせないんでしょうけど......。



「あら?」



 侵入者みたいねぇ......。変な気配がちょろちょろと動いてるわ?

 もう、忙しい時に邪魔しにきたのはいったい何処の馬鹿かしら?


 あれは......。


 あはっ!

 あははっ!!


 あれは私が壊したはずの玩具じゃないのぉ!

 壊したはずなのに、壊れてなかったのねぇっ!?



「んふっ」



 いいわぁ...。

 すごく良い。


 丁度ムシャクシャしてて、何かを滅茶苦茶にしちゃいたいと思ってたところなのよ。


 どうやら杖の部屋に居るみたいねぇ......。

 あの結界をどうにか出来るとは思わないんだけど、変に触られるのは困るのよねぇ...。



 ......。


 ...。


 あらぁ...?


 最初は玩具に目が行って気が付かなかったけど、よくよく部屋を見渡してみると、部屋の中が少し見ない間にずいぶんと殺風景になったわねぇ?


  --んー...


 まぁ、部屋の中の物が無くなってるのは別にどうだっていいのよ。


 けど、けれどね?

 杖が無くなってるのはなんでかしら?


 それは重大な問題だわ?



「ところでそこにあった杖を知らないかしら?」


「し、知らないのだ」



 あららぁ?


 知らないとは言ってるけど怪しいわね。

 けど、あんなものをアイテムボックスに入れられるわけがないし、この部屋の何処かに隠してるのかしら?



「でもぉ...あれ、使い道がまだあるのよねぇ」


「そ、そうなのか?」



 んー......。

 本当に杖の気配は本当に無いわねぇ...。


 いったいどうしたのかしら?


 行き詰まってたから助かったんだけど、杖が無いと女神を堕とせないのよねぇ。


 もう帰るって言ってるしぃ、そうねぇ......。

 魔王様の復活を優先してもいいんだけど、やっぱりあの女を八つ裂きにするのは捨てきれないわねぇ...。


 あんな杖、アイテムボックスには入らないでしょうし...何処かに隠してるんだとは思うんだけど。

 けど、気配も感じないのは何でなのかしらぁ?


 まぁいいわぁ、少し追い詰めれば杖の在り処を吐くでしょうし。

 あの女を堕とす前戯だと思えば追いかけっこも悪くないかもしれないわ。



「ふふふ...」



 さあて、どんな風に追い詰めようかしらぁ?


 ちょっとずつ身体を削っていけば話してくれるかもしれないわねぇ?

 それとも、もう一人のすぐ壊れちゃいそうな方を、ゆっくり抉って壊せば話してくれるのかしらぁ?


 アハハッ、何だか楽しくなってきちゃったわぁ......。


 さあて、どうやって痛めつけようかしら?



 


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