第37話 戦略的撤退ですっ

 



 ◇ ◆ ケイト視点 ◇ ◆



   --はぁ


     --はぁ


  --はぁっ


「くっ」


   --ガキンッ

  --ガゴッ


 ぐぁぁあぁぁぁぁぉぉぉぉん。


    --サラサラサラ...


 ふぅ、また1匹......。

 仮面を拳で砕くと、金仮面のミイラは砂になって崩れ去って行きました。


 しかしこのミイラ達、弱点が分かりやすいのは非常に良いことなんですが、それが異常に硬いのはなんとかならないですかね...。

 仮面を砕くのに毎回全力攻撃しないといけないから、消耗がとんでもなく激しくて辛いです。


   --ガキン


  --ザッ


「ぅぐっ、結構数を減らしたはずなのに、次から次へと増えて出てくる...」



 いったいどれだけいるんでしょうか?

 このままだと唯でさえ少ない僕の魔力が限界になってしまいます。


  --ここは逃げるか...


 一般人や他の冒険者さんへの被害を考えて全て殲滅する予定でしたが、予想より数が多すぎます。

 しかし逃げるとしても、今からレムさんを追いかけるには消耗が激しすぎますし、一度体勢を立て直す必要がありますね。


  --はぁ...


「最後の1本なんですが...」



 手にとった聖水を真上に投げると、手の中で気功を練り上げていく。

 本来は敵の体内に振動を伝える技なんですが...。



「はぁぁっ!」


  --パキィィンッ

      --バショッ


 こうやって液体に使うと、振動で液体が霧状になって吹き飛びます。

 これで周囲のアンデッドは一時的に動きが鈍くなり、こうして余裕を持って逃げ出せるわけです。


 さてと、そろそろ夜になりますし寝床を確保しないと駄目ですね...。

 この辺りはまだ金仮面のミイラがうろついてますし、一旦宿屋街の方へ下がった方が良さそうですね。


 んー...消耗品も殆ど底をついてしまいましたし、一度ギルドへ戻った方が良いかも......いえ、駄目ですね。

 レムさんを置いて僕一人で戻ったら、レイナ様にどんな仕打ちを受けるか分かったもんじゃありません。


 あの人は......。本当は徳の高い強い人なんですけどね......。

 照れ隠しなのか場を盛り上げるのが下手なのか、どうも緊迫した状況になると特に冗談にならない冗談を言ってくるんですよね。


 さてと...結構離れましたし、この辺りに寝床を確保して侵入者に反応する罠でも仕掛けましょうか。

 アンデッド相手ですし、魔力に反応する鳴子(なるこ)で良さそうですね。


 それから良さそうな空き家を見つけて罠を仕掛けると、一晩ぐっすり寝たんですが...。


 なんでしょうかね。

 アンデッドが相手なので全然眠れないと覚悟してたんですが、一匹も来ないとは拍子抜けです。

 おかげで魔力も体力も全回復したんですが......。


  --んー......


 思ったよりもこの辺りの討伐がうまくいってるんでしょうか?

 しかし、その割には冒険者の姿や気配を見かけないんですが。


 まぁしかし、不気味ですがこのまま此処で調べてる余裕なんてありませんね。

  


「さて、まずはレムさんを探さないと...」



 レムさんが連れ去られた方角から最初は凄い破壊音が響いてましたが、すぐに止んだと言うことは......。

 やられてなければ上手く何処かへ逃げ込んだと考えるべきでしょうか。


 レイナ様が僕と一緒に送り出したと言うことは、彼女の目から見ても強いと判断されたと言うことでしょうし。

 短時間で倒されてるとは考えにくいのですが......。


 そうなると、問題は何処に隠れているかですね。

 まだあの『ナイトメアクラス』のバケモノが彷徨いているでしょうし、下手に大声を上げて呼びかけるわけにもいきません。



「厄介...ですね」



 取り敢えず、昨日はぐれた場所に行ってから考えましょうか...。


 そう思って戻ってきたは良いんですが...これ。


  --ガキ..ンッ

      --ガッ...


   --ゴォォッ...


 遠くから戦闘音が響いてきてますね。

 しかし音から察するに一人の戦闘音では無さそうです。


 金属のぶつかり合う音と魔法、殴りつける音......。


 それがほぼ同時に何度か聞こえてきています。それを考慮すると少なくとも2人...いえ、3人はいそうです。

 ほかの冒険者が此処まできてるんでしょうか?


 そう言えば逃げる時に危険を知らせる狼煙を上げたんですが、あれで救援に来た可能性がありますね。


 けど、それなら尚更急がないといけませんね。

 昨日のあの金仮面のミイラやバケモノが彷徨いてますし、この辺りは非常に危険です。


 それで急いで戦闘音のする場所に駆けつけたんですが......。


  --ガゴッ

  

   --キンッ

  --キンッ


 ...あれは、蒼天のみなさんですよね?

 それにアルティナさんまで?


 彼らが居ると言うことは、レイナ様かグラディスさんが僕の救援に寄越してくれたんでしょうか?


 それに戦ってる相手は昨日の金仮面ミイラですよね。


 確かリーダーと魔法使いの女性がAランク、獣人の少女がBランクでパーティランクがB...いえ、レイナ様がAにすると言ってましたから実力的にはAですね。

 あの敵とあそこまで渡り合えるなら、かなり助けになります。


 僕一人だとどうしても捌ききれませんでしたからね。


 だけどどうやら弱点は分かっていても、仮面が壊せないみたいですね。


 あれはかなり強力な魔法抵抗(レジスト)が掛けられていますし、単純な物理攻撃も通りにくいですからね。

 気功技の様な魔法以外で物理防御を貫ける攻撃がないと壊せないかもしれません。


 ああっ、アルティナさんの方まで敵がっ!


 誤射されないように戦闘が一段落ついてから出ていこうと思っていたんですが、そうも言ってられませんね。


  --気功強化


 ふぅぅ......。


 さて、気功は時間でどんどん消耗してしまいますから、一気に片付けてしまいましょう。


 足に力を込めると、まず最初にアルティナさんの近くにいる敵へと一足で近づきます。

 そしてそのまま敵の攻撃にカウンターを合わせて、仮面を一撃で砕きます。


  --ガゴォッ


 ぐぁあぁぁぉぉぉん...。


   --サラサラサラ


 次っ!!


   --サッ

  --ガゴォッ


 ぐぁぁぉぉおおぉぉん。


 よし、1日戦ってただけあって敵の動きは完璧に読めますね。

 体力と魔力さえ消耗してなければ、余裕をもって倒していけそうです。


 これで、後はジョニアックさんの辺りにいるやつだけですね。

 ちゃっちゃと倒してレムさんの捜索を手伝ってもらいましょう。



 

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