第36話 もしかしてピンチ!?
飛び込んだジョニーさんに反応して、屋根の敵も飛び降りて来ました。
--バズンッ
--バズンッ
でも敵は地面に辿り着く事はできず、全部ニナさんの魔法に撃ち抜かれて灰になっちゃいました。
8匹全部直撃ですか......相変わらず凄い精度です。
ようし、私も皆の活躍に負けないように、周囲の漏れた敵を処理しちゃいますよーっ。
「探知スキル 探知結界(サーチングサークル)!」
--むむ...
--むむむ...
どうやら敵はジョニーさんの方に集中していて、此方には一匹も流れて来てないみたいですね。
何時見てもジョニーさんの挑発(タウント)スキルは完璧ですっ!
......。
--ハッ!
お、思わず見とれてしまいましたっ!
敵が来ないからと言って気を抜いてはいけません。
周囲の状況には常に気を配っていないと、気配を悟らせない敵が潜んでるかもしれませんからねっ!!
--ゴガンッ
「...っ!」
地響きと共に、ジョニーさんが地面に大盾を突き刺しました、もの凄い迫力ですっ。
いきなり凄い音がするので、私は未だに慣れませんが...あのスキルには憧れます。
やっぱり派手な力に憧れるのは獣人の血のせいなんでしょうか...。
--ゴッ...ゴッゴゴゴッ
--ガガガガガガガッ
ジョニーさんは突き立てた盾をすくい上げるように一回転して、石造りの地面ごと地中に潜んでいた敵を上空にめくりあげました!
--1...2
--3、4、5
よしっ、ちゃんと5匹全部居ますねっ。
いつも思うんですが、このスキルは大雑把に見えるのに精度がとてつもないのです。
迫力、威力、精度、全部揃ってるなんて何度見ても人間業とは思えないです!!
--ばすっ
--ばすっ
吹き飛んだ敵はニナさんが魔法で綺麗に撃ち落とします...と。
「......」
ま、まぁ...これが何時も通りの戦闘なんですが、何でしょうか。
私が仕事してないんじゃなくて、私の出番が無いのが何時も通りなんですよ?
サボッてないです...。
私はサボッてないんですよっ!?
うぅ...。毎度の事ながら出番がないのは寂しいかなと思います。
でも、私は敵が漏れた時の対処が仕事ですから、暇なのが一番なんですけどね...。
敵が沢山くるって事は皆んなが苦戦してるって事ですから、私の仕事が無いってことは安全だって事なのですっ!!
それでも...流石に、今日はアルティナさんもいますし、一匹くらいは倒したいなと...。
い、いえ、私も格好(かっこ)よく活躍したいなぁってわけじゃないんですよ?
安全なのがやっぱり一番ですからねっ!
「わぁぁっ、ジョニアックさんもニナさんも凄いですねっ!!」
「そっ、ソウデスネー」
そんな二人の姿をキラキラした目でアルティナさんが見ています。
やっぱり私も活躍するところ見せたいですっ!!
見せたいんですが...。
わかってます。
それが油断に繋がって、怪我や死亡の元になる事くらいわかってるんですよっ!!
--うん、わかってますよ...
--わかってます
だけど、やっぱり...少しくらいなら...。
--丁度いい敵はいないかな?
余裕を持って倒せて、危険が少なくて、でも強そうに見えるヤツがベストですっ。
--探知結界(サーチングサークル)
「うぅ......」
まぁ、分かってましたよ、そんなに美味しい話しは無いって。
--パシュッ
たった今、ニナさんが撃ち抜いたやつが最後の一匹です。
とうとう最初から最後まで立ってるだけで終わってしまいました。
一部の人たちは私の事を『若くしてBランク、そしてAランク目前の天才冒険者!』とか、言っていたりしますが。
その実態はこんな感じなんですよ...。
......。
「...あれっ?」
そういえば、低級アンデッドしかいませんでしたよね?
--おっかしいなぁ
倒された敵...と言っても殆ど灰ですが、それを見渡しても低級以外の姿は見えませんし。
これだけ統率がとられてるんですから、一匹は意思が強く残った上位種が混じっているはずなんですが。
まさかニナさんが雑魚と一緒に灰に...は無理か、リッチは高ランクの魔物だからそもそも魔法はあまり効きませんし、ワイトでも魔盾(マジックシールド)くらいは展開するはずです。
もし居たら、それなりに見応えのある戦闘になったはずですし...倒してないと思うんですが。
--んー......
「ジョニーさんジョニーさん」
「ん? なんだい?」
「いえ、最初に言ってた上位種が見当たらないので...」
「あー......やっぱり居なかったかぁ......
僕も見かけなかったので隠れているんだろうと思ったんだけど、エルの探知結界(サーチングサークル)にもひっかからないとなると...」
「探知結界(サーチングサークル)」
念の為にもう一回スキルを使って周囲を調べてみたんですが、やっぱり大きな反応は無いですね。
「やはり、強い敵は近くに居ませんね」
「妙ですね...」
「ねーえジョニー、疲れたからそろそろ野営の場所作らない?」
「......そうだね、レムさん達を見つけるのにどれだけ時間がかかるかわからないし、先に拠点を作ろうか」
それから救難の狼煙が上がった場所の付近に拠点を作りました。
近場に打ち捨てられた露天から食料を拝借して、瓦礫から薪にできそうな木材を集めて来ると、アルティナさんが結界を張ってくれました。
これで安全地帯ができたので緊急時も逃げ込むことが出来ます。
それにしても、拠点作ってる間にもちょくちょく探知スキルを使ってたんですが、やっぱり上位アンデッドは居ませんでした。
報告のあった砂のミイラも見当たりませんし、何だか不気味な感じです。
それから周囲を一通り調べましたが、報告のあった場所と思われる瓦礫の跡にも特に何もありませんでした。
古い血の跡があったので、この跡を追えば......とも思ったんですが、途中で意図的に消されたようで辿ることが出来ませんでした。
そんなこんなで夜になってしまって、収穫はなにもなく...拠点で一晩過ごしてしまいました。
しかも夜になるとアンデッドは活発になるんですが、何故か何も来ませんでした。
いえ、アルティナさんの結界のおかげと言えばそうなんですが。
気配察知が得意な私が一晩がんばったて周囲を警戒してたのに、結界の外ですら動きは何もありませんでした。
あわよくば夜になれば何か手がかりが掴めるかもと期待してたんですが...。
これは一筋縄ではいかなそうです。
それで朝になったんですが。
あのですね...。
これはあれです、一晩頑張ったせいで気が緩んじゃったんですよ。
だって朝日と一緒にアンデッドが攻めてくるなんて誰も思わないですよねっ!?
何で明け方に起きてきてるんですかっ!!
アンデッドなんだから夜に活動して下さいよぉぉっ!!
「ジョニーさんんっ、ごめんなさいぃー!!」
--ガキンッ
--ゴッ
「いや、これは仕方ないよっ...っと」
--ガゴッ
私が謝ると、ジョニーさんが敵を盾で殴り飛ばしながらフォローしてくれました。
そう言ってくれるだけでも有り難いです。
だってさっきからニナさんが無言でもの凄い睨んでくるんですよ。
あの、それ、ホント恐いのでヤメテクダサイ...。
それにしてもいったいこの砂のミイラは何処から出てきたんでしょうか。
趣味の悪い金色の仮面をつけていて、攻撃を当てると砂になって崩れるんですが、すぐに元へと戻ってしまいます。
しかもこの敵...っ!
--キン
--キンキンキンカキンッ
ちょっ、待って待って、アンデッドの癖に動きが速すぎです!!
これじゃあ捌くのがいっぱいいっぱいで、遊撃する余裕が全くありませんっ。
「アルティナさんっ」
「は、はいっ」
「すみませんが私から絶対に離れないでくださいね!!」
「わかりましたっ!」
ちょっとこの敵からは守り抜くのがいっぱいいっぱいで...。
--ガキンッ
--ガッ
少しでも離れられると守りきれそうにありませんっ。
「煉獄(ヘルバーニング)」
--ブォウッ
「ひぅっ」
ニナさんがいきなり放った中級魔法が、私の鼻先を掠めていきましたっ。
思わずなんか変な声が出ちゃったじゃないですかっ!!
「ちょっと、何するんですか!!」
今はアルティナさんを護ってるし、しかも見られてるし! 変な声聞かれちゃったし!! 激怒ですよ私は!!
「あんたなら大丈夫だと思ったのよ
まぁ、これも信頼の証ってやつだと思いなさい」
「こんな信頼いりませんっ!」
もぅ、全く、ニナさんはいつも私のギリギリに魔法を撃ち込んで来るところが嫌いですっ!!
「それよりジョニー?」
「んっ?」
--ガコッ
「こいつら、仮面に何かヤバそうな魔法がかかってるわよ?」
「なるほど、仮面が弱点かもしれないっと!」
--ゴガッ
--カキンッ
「んー...これは硬すぎるかも
ニナの魔法で壊せない?」
「無理ね
全力でやってもいいなら試してみるけど...」
「あー...全力はちょっと
僕たちまで巻き込まれるとシャレになんない」
ジョニーさんが敵を地面に叩きつけて剣を突き立てましたが仮面に傷一つはいりませんでした。
それでニナさんの魔法も単発魔法の威力じゃ無理...と。
ニナさんが本気でやったら冗談抜きにこの辺り一面が灰になっちゃうので、これで仮面を壊す手段は無い...と。
え? 私?
私は精度と速度はパーティで一番だけど、火力は最弱だからあの二人が無理なら無理ですよ?
......。
これはまさか手詰まりなんじゃ...。あれっ?
「ジョニーさんっ! 誰か来ます!!」
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