第31話 お持ち帰りしたいのだっ!!
◆ ◇ レムリア ◆ ◇
......
....
..
--テシテシ
--テシテシ
「んぬぅ...」
--ガタッ
......。
--テシテシ
--テシテシ
むぅ......。
何かが顔をテシテシしてくるのだ。
--いったい何なのだ?
「んー......?」
......。
目を開けると、薄暗い天井が炎の揺らめきでゆらゆらとゆれて見えたのだが...。
--んー......?
宿屋の天井はこんなだったか?
何だか記憶がモヤモヤしていて曖昧なのだ...。
「んん~......」
取り敢えず伸びをしてから、身体を起こして周囲を......んん?
何だか妙にベッドが硬いような気がするのだが......って、床ではないか!?
どうしてこんなところに寝ているのだ?
妾のベッドは何処へ行ってしまったのだ!?
「むぅ...」
一応、申し訳程度にボロ布が敷かれてはいるのだが、寝ぼけてこんな場所で寝てしまったのか?
いや、そもそもここは......妾の居た宿屋とは違う場所だな。
見覚えが全くないぞ?
--ガタッ
「む?」
いま物音がしたが...。んん?
お、おお。音の方へ振り向いたらエメラルド色の瞳と目が合ってしまったのだ。
「ええと...」
--誰なのだ?
短いボサボサの髪をした、全身が灰色の少女がそこにいた。
ボロ布を纏っていて、頭の上には犬耳がピンと立っているぞ。
しかし身体が驚くほど細いのだが。飯をちゃんと食って無いのだろうか?
驚かせてしまったのか、尻尾は股の下に入り込んでいて、全身が泥だらけなのだ。
綺麗な銀色の毛並みまで殆ど灰色になってしまっているではないか。
--取り敢えずあれだなっ
「洗浄(クリーン)」
「んんっ!?」
綺麗な物が汚れておるのは我慢できんのだっ。
うむうむ、やはり綺麗でピカピカしたものはこうでなければなっ。
洗浄(クリーン)の魔法で汚れを全部吹き飛ばすと、陶器のような肌と、キラキラとした白銀色の髪をした少女が現れたのだ。
しかしまた驚かせてしまったのか、身体をプルプルと震わせてかたまってしまったのだ。
これでは本当にお人形さんみたいだぞっ。
「......ふむ」
本当に宝物の人形みたいなのだ。
......ハッ!
いかんいかん、どうも妾はこういった宝物じみた物に弱いのだ。
一瞬、収納(アイテムボックス)に入れて持って帰ろうかと考えてしまったぞ。
まぁ、残念ながら生き物は入らんからお持ち帰りはできんのだが。
髪の毛くらいなら、ちょっとくらいもらっても大丈夫だろうか?
とっても綺麗なのだ...。
......。
おっ、おお、思わず見とれてしまったぞ。
そうだな、今はそんな事しておる場合では無いのだ。先に今の状況を把握せねばならんっ。
--んー......。
確か金ピカミイラから仮面を剥いで......。
この確かオシャレな仮面を装備したのだ。
ふむ、この仮面はインベントリにいれとこう。
ええと...それで、でかいのが出てきて...。
お、おおっ。
...思い出したのだ!!
鬼の気持ち悪い女にぶっ飛ばされたのだ...。
うぅ......思い返しただけでも凹むのだ...。
あんな敵、完全に初見殺しではないかっ。
むぅー...しかし、流石に何か攻略法くらいあるはずだと思うのだが...。
使用回数上限付きの最上級魔法だけは発動前に止められなんだが、もしかしたら最上級魔法ならダメージがとおるのではないか?
しかし、妾の使える最高の防御魔法が壊されてしまったのだ、あの攻撃を何とか出来ねば、戦うことができないぞ。
むぅ... 一人だと難しいのだ...。
後は...物理攻撃なら効くかもしれんと言うことか。
しかし妾は物理特化では無いからな。あの強さの敵を倒すとなれば、もっと近接攻撃の経験値を積む必要があるのだ。
--クイッ
--クイッ
「むっ?」
考え込んでいると何時の間にか獣人娘が側に居て、何故か心配そうな表情で袖を引っ張ってきていた。
--どうかしたのか?
「お姉..ちゃ...怪我?」
「怪我?」
「んっ、大丈夫?」
--怪我...
--怪我...
「んー...あっ」
そうだ、そう言えばかなりの深手を負っておったのだったなっ。
しかし...ふむ。
ざっと身体を動かしてみた感じでは、完治しているみたいなのだ。
まっ、妾の自然治癒能力ならば当たり前だがなっ!!
装備も...うむ、自然修復機能も問題なく発動しておるようだな。傷跡一つ存在せんのだっ。
それにしても妾の事を心配してくれるとは...この銀色の子はとても良い子なのだっ。
「うむ、妾はもう大丈夫なのだっ」
「ん、良かった」
「そう言えばここは何処なのだ?」
「えと、地下...」
「地下?」
「んっ、外は危ないから、私が運んだっ」
あー...確かに、アンデッドがいっぱい降ってきておったからな。
しかし妾の事を安全な此処に運んでくれたのか。
此処が何処だかわからんが、あのまま外にいたらムシャムシャ食べられて死んでいたかもしれんかったのだ。
--助かったぞ...
と、言う事は......この少女は命の恩人と言うことなのだな。
--ええと...
「妾はレムリアと言うのだが、獣っ娘の名前は何と言うのだ?
ああ、因みに妾の事はレムと呼んでくれれば問題ないぞっ」
「レム...ちゃん?
私は、えと...名前?」
「うむっ」
「んー......んっ
最近は...外に行くと、クソガキとか、スラムのゴミとか......呼ばれてた」
「いや、それは名前ではないと思うのだが...」
「んー......?」
--もしかして名前が無いのか?
「名前が無いのなら、妾が勝手に付けても良いか?」
「んっ、名前くれるの?」
「うむ、獣っ娘がそれで良ければだがな」
「私も名前、欲しいっ!」
「そうか、そうか、では任せるのだっ......ふむ」
名前を付けるのは意外と難しいな。やはり此処は単純に、銀色をしているから『銀子(ぎんこ)』で良いか?
いや、しかしそれは流石に安直すぎるだろうか...。
むぅ、獣っ娘(こ)が何だかもの凄く、期待の眼差を向けてきているのだが。
ワクワクが抑えられないのか、尻尾もブンブンしておるし...これは、何としても良い名前を付けなければならんな。
--何か...
--何か良い名は無いか...?
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