第18話 エルの受難と人外達
◇ ◆ エル視点 ◆ ◇
--凄い......
レムさんが歩き出したと思ったら、ジョニーさんの喉元に向けて剣を突き上げていました。
あんな攻撃を剣で弾けるジョニーさんも凄いけど、それ以上にレムさんの動きが私には理解すら出来なかったです。
--...はっ!
しまった、攻撃をしないとっ。
--カキンッ
思わず見とれて止まった手を動かして攻撃するけれど、一瞬いけるかと思った斬撃は盾で軽々と防がれてしまいました。
うう...思わず見とれてしまいました。折角レムさんが宣言通り隙をつくってくれたのに......。
しかし、相手がジョニーさんですからそう簡単に隙を突いて簡単に攻撃が当たるなんて思っていませんでしたが、これは思った以上に難しそうです。
今の隙はジョニーさんにしては珍しく大きかったですし。やはりジョニーさんもレムさんのあんな動きを見せられて動揺してるって事なんでしょうか?
それならまだチャンスはあるかもしれません。
今一度気を引き締めて、ジョニーさんの姿を瞳に収める。少しでも隙が出れば突けるように、何一つ見逃さないように。
何時もの模擬戦では一撃すら入れられませんが、レムさんが居る今なら何だかいけそうな気がします。2人でと言うのは少し卑怯な気もしますが、これを逃せばジョニーさんに攻撃を当てれる機会なんて無いですから遠慮はしませんっ。
「っふぅ......」
一旦呼吸を整えて、集中...集中......。
--さて...
レムさんから言われた分担は単純で、作戦も難しいものではありませんでした。
私が攻撃で、レムさんが隙を作り出す。私はレムさんの作り出した隙を突く、話し合って決めたのはそれだけです。
--キンッ
--キンッ
--ガキンッ
--ザッ
--ザッ
......。
「えーっと...」
レムさんとジョニーさんの打ち合いがどんどん激しくなっていってるんですけど...。ジョニーさんがあんなに打ち込まれている姿は初めて見ます。
何時もなら1度や2度打ち合えば、相手は体勢を崩されて床に倒れているはずなのに、もう10回以上は剣を打ち合う音が聞こえてきています。
音って言ったのは、もう斬撃が目で追えないくらいの速度がになっているからで...。何といいますか、ジョニーさんは私の1つ上のランクなんですけど、1つ違うだけどこんなに人間離れするものなんですね。あの領域にはまだまだ私には届きません。
いったいこんな戦いにどうやって手出しすれば......。いえ、手を出さないとっ!
ジョニーさんとレムさんが互角なら、そこに私が加われば勝てるはずです!!
--キン
--キン
--カンッ
よく見て...。
--キンッ
--カキンッ
ここだっ!
--カキンッ
くっ、弾かれました。
上手くジョニーさんの死角から突いているはずなのに、まるで見えてるみたいに盾で攻撃が弾かれてしまう。
--ザッ
--ザザッ
「...ぅえっ?」
レムさんの動きが切り変わった。
ジョニーさんに向かって跳びかかっていたのが、横へ回り込むような移動になった。
いったい何が来るんでしょうか...?
--あっ...
折角慣れてきたのにこれじゃあまた振り出しじゃないですかっ!?
こ、今度はどうやって合わせれば...。
「す~...はぁ...」
--落ち着いて...私っ
まずは良く見て、レムさんの動きにまずはしっかり慣れないと。
「ん?」
--ゴシゴシ
あれ? レムさんがダブって見えます。
ちょっ、ちょっと待って下さい。どうなってるんですあれ?
レムさんがジョニーさんの周囲を移動しながら増えてます。
どうやらジョニーさんにも同じように見えてるみたいで、私の方に向いていた盾を警戒してレムさんの方へ向け直し...。
--あっ!
--カキンッ
うぅ...また失敗しました。
私の攻撃は後一?届かず、難なくジョニーさんに弾かれてしまいました。
--折角の隙が...
でも、仕方ないですよね。あんなの気になって見とれちゃいますよ。
--ッキンッ
--ザッ
--ザッ
レムさんはジョニーさんへジグザグに近づいて攻撃をしてます。してるんですが、近づく時に残像の様なものが残って増えて見えます。
--ブンッ
そして、見事に残像へ向かってジョニーさんが空振って、そこにレムさんが容赦なく追撃を加えます。
--ガキンッ
でもその攻撃は見事にジョニーさんが弾き飛ばして防ぎました。
あんなのに手を出す手段が私には......。いえ、だ、出さないと、どっ、どうしましょう...。
こっ、こうなったらもうヤケですっ。兎に角ジョニーさんの意識がレムさんに向いた瞬間を狙って手を出しますっ
--カンッ
--カンッ
今っ!
--スッ
むぅ、とうとう防ぐ事すらなく避けてきましたよっ。流石に受けもせず避けられるのは屈辱なのですっ!
「ていっ てあっ」
--キンッ
--キンッ
--ブンッ
ジョニーさんはやっぱり凄い。私の攻撃を弾きながら、かえす刃でレムさんを牽制しています。でもレムさんもレムさんで次元が違います。どうなってるんですかあれは?
私は斥候を担当しているのでジョニーさんよりも気配を察知するスキルが高いのですが。
攻撃しているレムさんには確かに気配が存在するのに、ジョニーさんの剣が当たると残像になって消えてしまいます。そして気配を感じない残像からレムさんが攻撃を繰り出してきます。
それを反射だけで弾くジョニーさんもジョニーさんですが...。あれ、私なら絶対に気配で惑わされて即ダウンですよ。
こんなハイレベルな戦いに、私はどうやって参加すれば良いんでしょうか? 先程から攻撃は加えてるんですが当たる気が全くしませんよぅ。
--カンッ
--カキン
--ザザッ
--ザッ
--キン
--キン
--ガガッ
--ズザッ
「......。」
何だか、私の事忘れ去られてませんか?
二人共が熱くなりすぎて、私が完全に蚊帳の外なんですが。
はぁ...、それにしてもジョニーさんは鉄壁だなぁ。
私ならあんなレムさんの奇妙な攻撃、どれだけ練習しても受けれるきがしませんよ。
ああ、えっと、攻撃ですか?
--諦めました
おかしいですよね、『模擬戦では良い機会だし、エルの連携技術もちゃんと見る』...って、ジョニーさんが話し合いで言ってたはずなのに。今では私の事を片手間に対応してるようにしか見えません。あれは完全に当初の目的忘れてますよ。
一応、大勢だけは守ろうかと思って攻撃はしてるんですけど。殆ど無意識に弾かれたり避けられたりして、私の自信がバキバキなんですけど...。
一応これでも、私って結構周りから才能あるって言われてて、Aランクも目前って...。その『目前』がアレですか? 私の攻撃が隙を突いても一切通らないんですが??
確かにあの領域にはまだ届かないとは思っていましたが、二人がかりでこれだと悲しくなってきます。
あっ、遠巻きに観戦してるニナさんとグラディスさんも白い目で見てる気がします。
--あれ?
あれは組合長(ギルドマスター)かな? 留守だって聞いてましたけど、もう帰られたんでしょうか?
--ガカンッ
--カッ
--ザッ
--キキンッ
......。
もうレムさんの実力はわかりましたし、そろそろやめませんか? ジョニーさん。私、そろそろ泣いちゃいますよ?
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