エヴァーラスティング・カレイドガール
音海佐弥
#00 Aperitif.
『プロローグは甘い菓子とともに』
#00-01「宝石のような輝きをもって」
『ご覧ください。彼女の魔法がいま、宝石のような輝きをもって私たちの目の前に現れました』
帝都コーベの街頭ヴィジョンに、ちいさな人影が映し出された。興奮ぎみのニュースキャスターの声に引かれるように、道行く群衆は足を止めてそれを見つめていた。とある人々はざわざわと小声で話し合いながら、とある人々は息を飲んで口を半開きにしながら。だれもがその魔法を見つめていた。
星空が包み込む闇を流星のごとく引き裂くその影の動きを、街頭ヴィジョンの映像がついにとらえた。そこに大きく映し出されたものを見て、群衆は思わず声をあげた。
ウェディングドレス姿の花嫁。
宵闇に浮き上がる純白のドレス。建物の屋根から屋根へと移っていくそのたびに、月明かりを受けて閃きを放つ頭上のティアラ。その正体は、信じる者に救いの手を伸べる天使か、はたまた巷間に災厄をもたらす亡霊か。
……いや、そのどちらでもない。
人影がなにかを口に頬張った。するとその姿がおぼろげな光をまとったかと思うと、光は強さを増し、花嫁はまばゆいばかりの光に包まれた。その光が弾け飛ぶように散った。人影があったところに残されたのは、コーベの街を覆う宵闇だけだった。
『ああッ、彼女の影が消えてしまいましたッ。またしても逃げられました。彼女はヒョーゴ警察を、そして我々帝都の市民をみごとにあざむき、その姿をくらましてしまったのです』
目の前で起こった魔法のような映像とニュースキャスターの言葉を受けて、群衆はさらにざわめき立つ。コーベの街の人々は、口々に彼女のことを語り合っている。また出たのか、ヒョーゴ警察はなにをしているんだ、こんどはだれがなにを盗られたの、いまの光見た? あれが彼女の魔法なのね、まったくみごとな変装術だよ、あれが最近話題の——。
『ヒョーゴ警察も彼女をとらえようと躍起になっていますが、彼女はそれを上回る手口で我々を煙に巻いていきます。それを支える彼女の魔法。まるで
星空が包み込むコーベの街の闇を、流星のごとく引き裂いたひとつの影。
それは、信じる者に救いの手を伸べる天使でも、巷間に災厄をもたらす亡霊でもない。
花嫁の影の正体は、ひとりの少女であった。
その名も、西宮カレン。人呼んで、「怪盗・
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