隠された右手2
「……ねえ」
レインはレイの右手を掴んでまじまじと見つめている。
「レイのみぎてってけがしてるの?」
「まあ、そんなところかな」
レイはレインから包帯が巻かれた右手を引き離し、左手で隠すように持った。その様子を目で追いながら、レインは右手の人差し指を甘く咥える。
その右手の甲には、赤い印が刻まれていた。
「……なおしてあげようか?」
レインはレイの左手越しに彼の包帯に隠された右手をその金色の瞳で凝視する。
「ぼくならなおせるよ」
「必要ないよ」
レイは右手の指でレインの額を弾く。
「あう」
「……これは僕の十字架だからね」
レイの言葉を受けてレインは不思議そうな顔をする。それを横目にレイは右手の包帯を軽く解いて風向きを確認し、頭の中の地図を見る。
「……西に行くか」
「にしにはなにがあるの?」
「見ればわかるでしょ」
レイは包帯を巻き直しながら西に視線を傾ける。
「魔人の谷だよ」
「んっ!」
魔人の谷、という単語にレインは目を輝かす。
「きいたことないことばだね! まじんのすむたにってことでいいのかな? それとも、まじんみたいなたに? あ、さすがにそれはないか。うーん……」
興味が自分の右手から移ったことを確認し、安心したように息を吐く。
レインは、初めて出会ったときから知識欲の塊だった。魔王と瓜二つのその姿から想像できないほど精神面で幼く、その精神的幼さを助長させるかのような知識欲の強さに、レイは今でも驚かされる。
その知識欲は、なにかに利用できないだろうか。
レイは初め、魔王について知るためにあえてレインを殺すことをしなかったが、今では彼女とそれなりに親密な関係を築き、上手く利用しようとしている。
「わからないね!」
レインは楽しそうに笑いながらレイの腕を叩く。レイは苦しそうに呻くが、レインがそれを気にした様子はない。
「ぜんっぜんわからないよ!」
「……随分と嬉しそうだね」
「うん! しらないことがしれるからね! すごくうれしい!」
「そっか」
レイは眩しそうにレインの純粋な笑顔から目を逸らす。
「それは良かった」
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