第3話 美香えもん


 ウイルス騒動から1週間が過ぎ俺、工藤涼は暢気にパソコンをいじっていた。

 というのも、姉の美香があの時にパソコンに突っ込んだウイルスが働いていて、ウイルスがどこからも入ってこれないある意味無敵なパソコンになってしまった。

 なのでウイルスを気にせずに深層ウェブに入ることができる。

 暢気に深層ウェブに入っているのは世界中どこを探しても俺ぐらいだろう。

 

 そんなこんなで俺は深層ウェブの情報をいろいろと調べ上げた。

 そこでわかった情報がいくつかある。


 1つ、どうやらこの深層ウェブをダウンロードできるURLはかなり早い頻度で変わっているようだ。

 おそらくサイバー警察や国家政府に見つかって対応されないようにするためだろう。

 

 1つ、深層ウェブの住民はアメリカ、日本、中国などの発展国の人間のみに限られているようだ。

 発展途上国の人間がいない理由はそもそもやれる環境ではないからと、国家への反逆精神を植え付ける理由になるからであろう。


 1つ、深層ウェブの中心部、つまりメインサーバーはどこにあるかは誰も知らない。

 ついでに言えばだれが作ったのかも、何のために作ったのも、深層ウェブの住人でさえわからないようだ。


 1つ、これに限っては噂に近いのだろうが、この深層ウェブのどこかにこの世の未来が書かれているデータがあるそうだ。

 あくまで噂なのだが、国政府が動くレベルである可能性が高い代物である。

 まぁ少なからず俺には関係のない話だ。


 そんなこんなで俺は深層ウェブになじみつつあった。


 「なぇ、あんた本当に大丈夫?」


 心配そうに姉ちゃんが聞いてきた。


 「大丈夫。少なからず姉ちゃんに迷惑のかかるようなことはしていないから」


 「そういう問題じゃないんだけどな~...」


 おそらく姉ちゃんが心配していることは、俺がグロい画像ばっかり見てサイコパスにでもなってしまったかどうかだろう。

 まぁ、それに関しては何も問題はない。

 誰かを殺したいという欲求はないし、芽生えたこともない。

 姉ちゃんは少し心配性なのだ。


 「で、前言ってたデータは見つかったの?」

 

 「別に見つけようと思って深層ウェブにいるわけではないんだけどな~。興味があるなら自分で探せばいいじゃん」


 「いや~、私ってピュアだからさ、ああいうグロい画像は見れないのだよ」


 どの口が言うか。

 コンピューターウイルスなんか作ったくせに。


 「そういう限られたデータを探すウイルスとかないのかよ」


 「あのさー涼、私はドラえもんじゃないし、ウイルスだって万能じゃないの。そんなピンポイントでデータを見つけ出すウイルスなんてあるわけないでしょ」


 「そうですか。なら自分で見つけ出してどうぞ」


 そう言って俺はパソコンに目を向けた。


 「ケチな弟を持ったものだよ」


 「うるせー」


 「じゃあ涼はそういうウイルスを創ったらデータを探してくれるんだね?」


 「は?,,,,まぁ、嫌とは言わないが」


 「言ったな~!じゃあ1時間で作ってくるからそこで待っていやがれ!!」


 そう言って姉ちゃんは走って部屋に向かった。


 「はぁ....」


 俺はため息をついた。


 すると誰かからメールが届いた。


 差出人はネッ友の『グーフィー』だった。

 もちろん『グーフィー』というのはハンドルネームであって本名ではない。

 もちろん、あの夢の国とも関係はない(はずだ)

 ただ俺は彼の本名は俺も知らない。


 メールにはこう書いてあった


 『RYOさん、久々にエンカしませんか?」


 『RYO』は俺のハンドルネームだ。

 まんまだが俺は結構気に入っていたりする。

 

 俺はすぐに返信した


 『いいですね。あ、そういえばグーフィーさんはプログラミングが得意でしたよね?よかったら手伝ってほしいことがあるのでエンカできる日にでも俺の家に来ませんか?』


 俺は念のために文面を確認してエンターボタンを押した。

 その瞬間、


 「ハァ,,,,ハァ,,,,。涼,,,,出来だぞ,,,,」


 「,,,,は?」


 数秒の間部屋に沈黙が流れた。

 送信完了の音が部屋に響いた。


 


 

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俺たちの深層ウェブ 荒神 辰 @tatsu0928

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