第10話 無私無偏

 60歳定年を迎えた私はシニア・アソシエイト(嘱託)で65歳まで現役社員と同じ仕事で残ることになった。所謂、再就職であって、履歴書と仕事歴を提出して審査に合格した。理由は段ボールのトップ企業の43頁の会社案内を担当していて、どうしても後任が見つからず、仕方のない面があったし、ページモノと言われる作業は若手の社員では無理であり、どうしてもベテラン社員でないと勤まらない面があった。会社案内は工場などの電話番号もしょっちゅう変わるし、全国の得意の工場での撮影で、金沢や兵庫の三田市などの工場で撮影立ち合いを行ったのであった。

 シニア・アソシエイトは新しい制度であり、当時の社長のアイディアだった。再雇用なので、待遇は変わって、ギャラは安くなるが、年金まで付く、社員にとっては有難い制度であった。現在のように年金の遅れによる65歳までの勤めを可能になった制度とは違って、審査の厳しい制度であって、前述したように、再雇用のために、履歴書や作業歴などの書類を提出してから審査されての再雇用であった。仕事内容は変わらず、再雇用されたことに感謝していた。幸運に恵まれたサラリーマン生活であった。私の性格は自分で言うのも恥ずかしいことではあるが、思想的には無私無偏だったので、難なく合格した。シニア・アソシエイトは雇用された後は上司の個人的な査定もなく今までのような作業予想などの書類の提出がなく。現役時代のような成果主義の書類提出もない気楽なサラリーマン生活の最終段階での恵まれた時代だった。成果主義も一時よりも、活気がなくなったが、人間が人間を審査するということは、好き嫌いという感情が入ってしまい

上手く行くものではない。

 シニア・アソシエイトは定年のご褒美のようなモノであって、現役時代と同じようにフレックス・タイム制を導入していた。時差出勤を行い10時出社だったことは私にとっては楽であった。新制度を導入して、結構、進んでいる会社へと移行していた。こういう進んだ制度であって、なぜ、ブラック企業なのか私は良く理解できない。

 D社は75歳まで、健保もあって60歳定年後も15年間続いているのである。後期高齢者になってはじめて国保に変わる。日本の企業の中でも優良企業と言ってもさし使いない。これは目一杯働いた結果だった。今回の事件でブラック企業などの扱いにさせるが、とんでもないことであり、もっと、総合的に判断して欲しい。

 私は43年間の内で長期欠席をしたこともなく。身体にも恵まれているが、精神力の面からも充実していたので、短距離競争ではなく、マラソンのように長期のスパーンで仕事を考えて貰いたい。短期的に考えると厭なこともあるが、長期的に考えれば、何でもないと思うのであって、例えば合わない上司であっても、長期的に見れば変わるので、待つことも大切なのだ。

 私の携わった仕事の中で、見事に花が咲いたイベントは女子サッカーのワールドサッカーでの優勝だった。

 優勝を遡ること10年前に女子サッカーのスポンサー募集を行っていたので、興味があった。社内放送による募集の放送があったので、興味があり、重点的に私が担当していた段ボールの会社へ売り込みをしたが、200万円の協賛広告だっが、ネイムをユニフォームに入れたりするような条件でもスポンサーがつかなかった。当時は有名選手としては沢と川上がいたので、私は伸びそうな予感がしていた。当時は無名に近い存在であって、スポンサー探しにも苦労した。その後も何回もプレゼンしたがスポンサーが使いない状態で苦労した。私は営業ではないが、メーカーでいうセールス・エンジニアと同じように、得意へ行くチャンスがあり、営業よりも10年近く得意を担当していたので、得意の役員とのコミュニケーションがあった。ツーカーの間柄だったのが、マイナーなスポーツだったので、なかなかスポンサーにはなってくれなかった。何回も何回もしつこいぐらいに話したが聞いて貰えないじょうたいだった。

 しかしながら、実力は少しずつ向上して、世界の上位でも戦えるようになったが、佐々木監督になったからは、力が付いて不動の上位クラスへと成長していった。まさか、ワールド・サッカー大会でアメリカが強く優勝するとは想いもよらなかった。来る日も来る日も粘り強く提案してもダメだったが、私は世界で通用するように成長を遂げるなでしこジャパンを予感していたことは先見性はあったと自負している。

 このような地味な仕事であるが、スポンサーが付かなければ強くなれないのはオリンピックでの金メタルを取るのと同じである。お金のフォローがなくてはスポーツだって強くなれないのだ。

 D社は縁の下の力持ちであって決して、表面のは出さないが、目立たない裏方作業を常に行っているのである。

 東京五輪においても、今度の事件が大きく立ちふさがっている状態であり、作業はハッキリ言ってやりにくい。大きなイベントに対する政府の対応が不味くて情けない。博覧会もIRなども裏方なくして存在すらしないのが現状であり、現在の時期は東京五輪に取っても重要な時期であって、国策捜査まがいの行動を国は取ってはならないと思うのである。そうでないと東京五輪の成功は覚束ないのである。

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