第8話 民心無情

 人民の心は不変なものではなく政治の善し悪しよって善くもなれば悪くもなる。私も50代になって保守系の広報を担当したのだが、一番厄介でハードな仕事だった。

 選挙の宣伝は残業などのことを考えてできる仕事ではない。前述したが、財務省の予算時と同じである。スピードとミスを許されないハードスケジュールの日程である。理由は日限が確定している作業だからである。公職選挙法という雁字搦めの法規によって異常な作業の連続であって、体験した人間でないと解らない点も多いのである。私の43年間の仕事の中で一番きつかった。反面勝った時の悦びは大きかった。社内褒章の社長賞を貰ったが、私の賞歴に刻まれた大きな賞であった。

 実は、時代は橋龍の自民党の選挙広報であった。現在の小選挙区比例代表制のはじめての選挙であった。私たちのグループは日本ではじめてパソコンのMACを使用して、200部の選挙マニュアルを作成したが、この200部という部数が中途半端だったので、印刷するにしては少なすぎる部数であったためにMACで作成した。

 当時はMACの普及の初期であった。いち早くMACを取り入れて作業を行ったことは大成功だった。実際にはプロダクションが制作した。理由は外部システムが出来上がり社内で制作することは少なく。実際にはプレゼン用の書類ぐらいを社内で制作していたのであって、制作の中心は外部のプロダクションである。ベテランになるに従って人の使い方が上手くなり、自分で制作をするということはない。所謂、ディレクションを行うのがD社であって、実際に使われるフィニシュ原稿はプロダクションで制作される。

 キャンペーン中以外に、そんな残業を行うということは、考えられない。ブラック企業と呼ばれているが、その意味がよく解らない。

 残業の中心も待ち時間などであって、流通などの会社と違っていて、売り場での肉体的な作業は皆無であり、頭脳ワークを中心としたデスクワークや得意との折衝などの作業が中心なのである。作業はシステム化されているし、今度のような事件などが起こりにくいアウトソーシングが進んだ会社なのだ。

 ネット部門は歴史が浅いので、年長者でも良く理解している人がいないのであって、社長も含めて殆ど解っていない状態である。しかしながら、このネットを無視してはこれからの民間企業は生き残れないが現実である。日々合理化している状態である。

 歴史の浅いネット関連で発生した事件だったので、D社にとっては苦手な部分であったことを忘れてはならない。ブランドイメージを造る会社がブランドを汚されたことに反省と不満を感じている。

 橋龍内閣では選挙は大勝利したが、消費税の値上げで躓いてしまった。橋本行革も決して成功したとは言えない。2つの省を只単に合併させたという無理があった。特に、厚生省と労働省を合併させたことは悔やまれる。

 理由は予算面からいってもウエートが高い両省であるので、偏り易い傾向にある。現在の作業の重要性から言っても人手不足は否めないのである。医療、介護労働が一つで行うことは、政府広報を多々手掛けた私としては納得できない。

 何とか元のように、厚生省、労働省を切り離して貰いたい。D社の上位3000社で成り立っているが、大企業3000社の問題を2~300人で厚生労働省東京労働局過重労働撲滅特別対策班(かとく)で行うことはどうしてもマスコミ受けするいけにえ企業を探して国民にアッピールする以外に道はない状態の中での作業には無理が生じるのであり、反論すらできない。肌理の細かい行政ができないのではないかと私は疑問を感じる。

 今という忙しい現実の中で中心的な両省合併している事実は解消して欲しいのである。改革もいい方へ転べばいいが、悪い方へ転ぶと苦難な道が待っている。

 両省の独立を望むのである。1選挙民としてこの省庁の大転換を望むのである。人手不足の中での作業は国も民間も苦しい作業であって、実際に五輪などの実際の作業の中での調査は現場に迷惑がかかるのである。

 行政裁量の判断は広範で国民の権利保障に重大な影響を与えることもあり「行政によるルール設定を制限するルール」を究明する必要性は高い。

 行政裁量とは、行政活動に対する「法律」による規制がなかったり曖昧であったりすることの裏返しとして行政側に判断余地が生じる現象である。

 いずれにしても、企業や国民の自由や財産に影響を及ばす法律の施行は慎重であるべきである。長い時間をかけて多くの正確な情報収集のもとに判断を行うことを切望するのである。

 企業は1日で成り立つものでなく。多くの社員はじめOBなどの人々によって造り上げられた大切な遺産である。長い時間の苦労によって創造された宝物であって社員の家族はじめとして生活がかかっているのである。

 1つの事件で、今まで行ってきたことが全否定されるネット社会の恐ろしさを忘れてはならない。確かに、繰り返してはならない事件であるが、社長も責任をとったので、見守って欲しいのである。

 労働組合をあまりやっていない経営陣が多いが、自分たちを守ることを忘れてはならないし、それには労働組合しか、会社との交渉を個人では限界であることを忘れてはならない。自分たちの労働組合を育てて、事故のあったのみの行動ではなく普段から管理運営に参加して行くことが望ましいのである。

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