第4話 一心不乱
広島にある自動車会社の撮影の時に当時は、スタジオは冷暖房の装置がなく。真夏の最中に40度の中での作業だった。額に手拭で氷をじかに巻いて私は脇目もふらず一心不乱に仕事に集中した。この作業時は入社10年目だった。この仕事程、後の仕事に影響を及ぼした仕事はなかった。
ホテルに帰ると按摩さんを呼んで疲労回復に努めた。こういうハードな仕事をしてからプロになって行くのだなという実感を体験した。
当時は私は結婚したてであって、30代になったばかしだった。副参事で副部長という地位が付いて、一応は管理職となっていた。100時間以上超える残業なのに、1日500円の弁当代だけの手当だけだった。D社は社員試用からはじまり社員・主事・副参事になるようなシステムであった。主事までは残業手当が付いているが、副参事になった途端になくなってしまう最近のドッカの店長のように真の管理職ではないのに残業カットの状態だった。こんな可笑しな組織のために労組が提訴して会社側が負けてからは、副参事にも残業が付くようになった。
企業と言うものは、このようにスレスレの違反行為を行うものである。社員の健康は自分や労組などと行動しないと、どうしても個人対会社だったら残業問題もどうなっていたか解らない。現在のように組合に入る人も減った弱体化した組合では経営がワンマンに成り易い。上手く経営に乗っている時はいいが、一度、問題が起きると、どうしても組合の力が必要になってくるのである。
特に、転勤や社内移動、職場環境に於いては組合についじ報告して、弱い立場の社員の状況を労働組合を利用しなければならない時に力になれないで悲劇を生んでしまう環境が生じてしまったことは私としては残念でならない。
ひとつには株の公開が労働環境に負の遺産を与えているのではないかと推測されるのである。私も少し株を行っているが、株主に配当を出すために社員の賃金を削らなければならないような事態も起こりうるので、社員に余裕を与えないような過酷な作業を要求するような状態になる可能性も無きにしもあらずであると私は感じている。マスコミ関係は一般企業ではあるが半公共性のある企業であり、あまり大株主によって左右されることは情報産業としても良くないことである。戦後のD社のやり手社長も株の公開を反対していたのは事実であって、あまりに身を削ってまでも馬車馬のように働くことが労働基準に対する矛盾が生じて問題が繰り返されるのが現状である。
D社の株の公開時期も昭和40年代からはじまった高度成長期だったら、もっと株価も上昇していたかもしれないが本社を建てる軍資金として、成熟期にさしかかった企業なので、遅かったきらいがあるのが現状だろう。大型安定株ではあるが、安定はしているけど、そんなには急に上がらない変化に乏しい株であろう。
集めたお金を何処に投資して利益を上げるかという難問があり、そのノウハウも乏しく。ソフトバンクのようには、なかなかいかないのが現状である。海外の企業を買収したりしているが、あまり思うように利益を出せるような状態までにはなっていない。
広い海外ばかりに集中し過ぎると国内の本社をはじめとする業務が手薄になり、ネットという新しいツールによる変化にも大転換できない弱さがある。
以前のようなマスコミ4媒体のような強さを発揮できないでいるのが現状である。かえって、小さい企業の方がネット広告に成功している場合が多い。
D社はネット社会では4媒体のような強さはなくなってきたのと同時にネット作業は単価は安くなってしまって、私なども、以前はマーク制作が30万円だったにが、5万円になってしまった現状では利益すら浮いてこない。このような状態の中での業界全体が苦戦しているのが現状であり、D社だけが苦戦しているわけではない。それと同時にスピード化が要求される世界であって、その連続で疲労困憊している。下請けのプロダクションなどは、もっと、ハードである。これらの条件の中での過酷な作業の連続が現場を苦しめている。会社の体制も十分に対応できなかったことも事実である。
スケジュールを得意サイドが握っているという特殊事情の中での作業であることも忘れてはならない。現場の社員は良く頑張っていると思うが。頑張り過ぎると過労になり、いつの時代も変わっていない。改善するは難しいく廃業する以外に道はない。
私も、今でも時間に追い詰められている夢を見るが、D社の社員はセッカチであって締め切り時間との勝負であって、外部の方の想像よりも過酷な作業である。新聞社の記者と同じように締め切る時間との勝負であり、特殊環境を理解して欲しい。現場は、一心不乱に締め切るとの勝負をしながら翌日掲載の日を迎えるのである。
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