第2話  切磋琢磨

 私の新入社員時代には1年間の新入社員教育期間があった。現在は余裕がなく。直ぐに即戦力として働かさせる。

 高橋まつりさんの悲劇は、1つには労働組合の弱体化があるかもしれない。私たちの新入社員当時は組合活動も盛んであり、上司が組合のビラを剥がしたことを攻める抗議文を出したりしていた。

 私も30代の後半に全国代議員大会に300票で代議員に選ばれて参加したが、会社全体の問題が浮彫りにされているのが良く理解できた。いろいろな問題も多いんだなという貴重な体験をすることができた。彼女の問題も個人対会社であると、どうしても会社の方が強いので、会社対労働組合である程度渉りあえる力は必要だったと悔やまれる。

 本来ならば、新入社員時代は仕事をして行く技能なり技術を学ぶ期間なのに、いきなりプロの仕事を行うという無理が今回の事件の根底にあったのではないかと推測されるのであるが……。

 人はいきなり完成された実力を出せるようになるのは早くて3年かかり、10年で中心的な社員として育つのであって、はっきり言えば、新入社員時代は修業期間であって、まだ、学んでいる最中である。いきなり完成した仕事をさせるという疑問が生じてならない。クリエーティブ局43年間勤めて私の経験から言うのであって、新入社員時代にはグループや個人で研修しながら切磋琢磨して腕を磨く期間であって戦力とはなりえない時期である。

 このような状況を踏まえての流言蜚語であったら、まだ解るが、ただの野次馬根性で会社を罵倒するのは辞めて欲しい。

 極論すれば、紙1枚で、2桁の憶を稼ぐ頭脳集団であって、普通の集団ではなく。1973年には一応、単体で世界一の広告代理業になったノウハウは持ち得ている集団に対する雑言は辞めて貰いたい今日この頃である。

 マスコミ関係の会社がこれ程、叩かれたということはそれなりに理由があると思うが、経営に問題があったことは事実であった。

 まだ、仕事の楽しさを経験しない内に亡くなってしまった彼女は無念だったと思う。苦しさだけの修業時代だけで散ってしまった尊い命に対して同情に沈思黙考する次第である。

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