不器用カナ

今回は“私”ではなく妹の話しになる。



高校生になった妹は、家族と、特に父と疎遠になっている。

自分を優しく包んでくれる、支えてくれる人を求めているので、不器用な父とは距離が空いてしまうのだ。

その空いてしまった空間を、私がカワセミになって二人の間を繋いでいるのだが、二人は親子なんだな。と思う時がある。

会話が苦手で、早とちり、相手の気持ちを考えないで行動しては相手と喧嘩して、辛いことも、悲しいことも、飲み込んで、飲みきれなくなったら爆発して物に当たるところなんかそっくりだ。


二人とも、人を頼らない。

頼らないけど甘えたい。

話さなくても分かって欲しい。

親子だから汲みとって欲しい。

そんな気持ちが、二人の背中から滲み出ている。


私は二人に二人の言葉を伝えている。

すると、二人は相手のことを分かった気になって安心する。

気付いていない。

私が伝える言葉は、“私の言葉”であって、“二人の言葉”ではないのだ。

本当にお互いを知るためには『話し合うこと』をしなければいけないのに……。

お互いに“相手のことを想って”それをしない。

すれ違いの日々は続いていく。


単純で、簡単なことだからこそ、難しい方法。

いつか二人が腹を割って話し合い、すれ違いの日々に終わりが来るのだろうか。

物語のようなハッピーエンドになるわけがないが、早く二人が話し合って欲しいなぁと、私は思っている。


似ているから難しい、不器用な親娘の日常である。

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“私物語” 神月 @Oct39

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