PCG(1) ポケットの魔法

 この中には何が入っているの? 上着のたくさんのポケットを

指さして少女が尋ねました。


「これかい? さあ、何に見える?」 


 取り出されたものはどれももやもやしていて、何だかよくわかりません。


「うーん、雲?」


 するとポケットの中身は雲になって青空に浮かびました。


「こっちは鳥」


 少女が言うなり、ころころと温かな小鳥が手のひらの上で

歌いました。

 これは木。枝が伸び、根が張り、梢が指先を空に伸ばしました。

 魚、お城、縦笛、船、流れ星。少女の声に応じて

たくさんのものが生まれました。


「魔法みたい」

「魔法は誰もが持っているものさ。僕が使うのは言葉だけだよ」


 手渡された本を少女が開くと――見知らぬ世界が、ほら。



(2017.2.12 第1回静岡文学マルシェ ポストカードギャザリング参加作)

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