300字SSポスカ 鋭利な希望

 魔法はあまくきらきらと、子どもたちを誘います。

 ビスケットの扉、チョコレートの屋根、キャンディの窓。迷いの森をさまよい歩き、

疲れ果てたところに現れたすてきな贈り物に、おさな子たちは頬をりんごのように

染めて歓声をあげました。


 さあさ、おいで。愚かな小鳥たち!


 子どもらの新鮮な血肉は、若さと美しさ、強い魔法のみなもと。魔女にとっては

どんなお菓子よりも魅力的なのです。

 細く小さな手足をつまんで、ぺろりと一呑み。広がる黒い笑みに、木々が梢を

ざわめかせ震えました。


 お菓子の家はじっと待っています。

 誰かが手にしたキャンディの破片が、魔女を貫くのを。

 姿なき子どもらの祈りと願いが、鋭利な希望に変わる日を。



(第5回300字SSポストカードラリー参加作 お題「お菓子」)

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