Twitter300字ss おかえり/もちろん
二年ぶりの故郷は、穴だらけで、煤けて、廃墟も同然だった。
建物の残骸に雨除けの帆布を渡しかけ、けれどその隙間からは火災ではなく、炊事の煙が上がっている。
俺が待っていてくれと言い、彼女が待つと答えたあの日から二年、ようやく空は晴れ、空襲の心配はなくなった。けど、手紙さえ交わせなかった二年は長い。生きているのか、無事でいるのか。
果たして、懐かしい場所に彼女はいた。幼子を負ぶい、はしゃぐ五人ばかりの子どもたちに歌を聴かせながら、炊き出しの鍋をかき回している。
「子だくさんになっちゃった」
こちらを向いた笑顔は、記憶にあるものと同じ。
「ねえ、父親になる覚悟はある?」
乾いた唇は砂と涙、それから幸福の味がした。
(300文字)
「Twitter300字ss」企画参加作品/お題「約束」
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