第10話
彼女と別れたあとは、普段通りに歩いて帰り、雲が夜に飲み込まれるのを見守ってから家に入った。
普段よりもうんと遅い帰宅だったけれど、家族は特に気にしたふうにも見えなかった。人にあまり興味のない血筋かとも考えながら意識を空に預けた。
目が覚める時刻も、そこから支度をして学校に向かうのもいつも通りで、電車に揺られ窓をぼんやりと見ながら普段通りに登校した。
昨日と何が違うでもなく、誰の意識も逸らさぬまま、席につく。前の席の彼女はいつも通りすでに頬杖をつきながら雲を見ていた。お互いに話すことのないままに雲を見ていたが、私は昨日雲を見たときよりも安らいでいた。
代わり映えのない毎日だけど、空が普段と別物に見えたのは彼女という雲が近くにいてくれるからなのだろう。
それからも放課後には私と彼女はいろいろと話した。身のある話なんてほとんどしなかったけど楽しかった。たいした趣味どころか何かに興味があるわけでもない私たちに、おもしろい話を求める方が酷だろう。
そんなある日、空を見ていた私はふと思うことがあった。青にまだなれていない私たち二人が神様の代わりに、紙に線を引いてやろう。とんだ思いつきだったが、今まで何にも興味を示さなかった私が、やってみたいと初めて思えたことだった。
そのことを彼女に伝えると、すぐにおもしろそうと返事が帰ってきた。
今度こそ掴んだ青を手放さない。そう心に言い聞かせた。
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