第9話

私と彼女は同じ雲同士だ。

どれだけ成り立ちに違いがあったとしても。


神様が気を利かせて、筆をふるって今のように私と彼女を引き合わせてくれたのだろうか。

今まで私を青に塗る素振りも見せなかったのに。

彼女に青をかすめておいて、それから何もよこさなかったのに。


「もうどうでもよくなった。人との関わりも、自分のことも。」


彼女のなげやりな想いはよくわかった。なぜなら、昔に私が感じたものと同じだからだ。


「雲は一方通行なんだ。こっちの想いなんかほっぽって、勝手に進んでいくんだ。」


私の言葉を彼女はどう受け取るのだろう。

間違いなく彼女との出会いが私の虚しさを埋めてくれたのは事実だ。


なら彼女はどうなのだろう。雲となり虚しさを抱えて過ごしてきて、それを埋めてくれる存在に出会えたのだろうか。


虚しさは埋まったか と、他人に図々しく尋ねられるものは雲の中にはいない。

他人に尋ねられるのなら雲なんかになってはいない。


彼女の相槌を聞きながら、窓の外を見ると

空に赤が混じり出していた。日が落ちるのに時間がかかるこの季節は、この時間でも雲がしっかりと見える。

だんだん赤に染まる雲を見ながら私と彼女は席を立ち、互いの帰路についた。

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