第8話
「私には小さい頃からの夢があったんだ。」
きっと彼女の夢は私の夢よりも立派なものが、明確な目標があったに違いない。それは、二年前の彼女の姿からも察しがつく。
「私は花になりたかった。どこでも明るく振る舞えて、みんなから親しまれるような。
でもさ、私には生まれもった才能もカリスマもないからさ。」
彼女は私から目を逸らし雲を見上げて、
「小学校の頃に、クラス全員で将来の夢を発表することがあってさ、私 頑張って「みんなを笑顔にできる人になりたい」って言ったんだ。そしたらみんなに「地味だから無理だ」って言われちゃってさ。悔しくて悔しくて。」
とても辛いのだろう。他人に自分の夢を否定されるのは。
「もうあとは意地でさ。みんなと話を合わせるために、別に見たくもないテレビを夜遅くまでみてさ。周りからの頼まれ事も嫌だったけど頑張ってやった。人と合わせるために気を張って。結構友達もできたんだ。」
彼女の横顔が歪んだ。
「高二のときに友達と口喧嘩してさ。つまんない理由だった。私が何でも引き受けてたから色んなこと押し付けられちゃって、さすがにいやになって文句言ったら、「もう予定いれてるから」だって。放課後にいつもだべってる奴が何言ってんだって思ったよ。」
悔しそうに、苦しそうに言葉を紡ぎ出す。
そんな友達だったかもあやしい人の悪口を言うのに、ここまで苦しんでいる彼女は本当に優しい。
「もうそこからは他人に気を使うのが嫌になって、教室で1人ぼっちになった。」
溢れ出る涙を気にもする様子もなく、ただ言い切ったと清々しそうに微笑んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます