第7話

「誰にも憶えてもらえない雲は誰のことも憶えられない。だけど、人の関わりはそんなふうには出来ていない。雲みたく関わっても憶えてもらえないことはないし、繋がりがあれば記憶に届く。」


短く息を吐き、私と彼女との繋がりを感じながら言葉を紡ぎ出す。


「あなたが私に初めて声をかけてくれた二年前、もしも私がそこで青を掴み損ねなかったなら。それ以前の機会に青を掴み取れていたなら。」


きっと、私は雲を見ることをやめてしまっただろう。

そして、青に染まりきった私は、なんてことのない人と人との繋がりにさしたる意味も持てずに死んでいったのだろう。


「今、私は誰かの記憶の青になりたい。ほんの一瞬でもいい。誰かが私を思い出の引き出しの隅にしまっておいてくれるのなら。」


こんなわけのわからない私の話を真摯に受け止め、考えてくれるのは、ここにいる彼女だけだろう。


私にはもうしゃべることはない。

次は、彼女が話す番だ。彼女の話を私が受け止めきれるのかはわからない。だけど、私の話を聞いてくれた彼女の話を聞く義務が、私にはあるように感じられた。

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