第4話

いつもなら、学校が終わるとすぐに帰路につく。行きは電車に揺られるが、帰り道は雲をながめながらゆっくりと歩く。学校にも家にも居場所がないのだからどこにいようと変わらないのではあるが、同じ雲には会わないのだから、雲は誰の心にも残らないのだから幾分過ごしやすかった。


だけど、今日の私は違った。

雨が降って雲がみえないからなのか、彼女に溜息の理由をきいてみたいからなのか。


終礼が終わっても私と彼女が席を立つことはなかった。お互いにぼんやりと窓越しに雲を見ながら、お互いに話す機会を窺いながら。


最初に声を掛けたのは彼女だったか私だったか。

私は何時間も重く閉ざした口を彼女にひらいた。


「誰もいなくなっちゃったね。」


彼女は、


「そうだね。」


と、後ろの席の私ですらこぼしかねない声で応えた。


私に最初に声をかけてくれた明るい彼女は影を落とし、私と同じくらい雲に近づいていた。


その日、私たちにできたのはそれだけだった。

後はもうお互いに、窓から見える雲を見ながら、その雲に神様が光る色を塗るまでの間、話すことはなかった。

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