第4話「一人っ子の俺と三人目の妹候補!?」

「ふう~」


 陽は沈み時刻は六時を回る。

 俺は湯船につかっていた。

 おそらく、サヤカがわかしたであろうそのお湯は熱くも冷たくもないちょうど良い温度だった。


「フンフフフフーン」


 気持ちの良い湯加減に柄にもなく鼻唄を歌ってしまう。


「そろそろ洗おうかな」


 湯船からでて椅子に座る。


「入・・・・・・るよ」


 風呂のドアが開く音がする。

 湯気に加え、普段はコンタクトの俺は誰が入ってきたのかはわからなかったが、声から女であることはわかった。


「モモちゃんか?」


 こんな大胆なことをするのは彼女ぐらいだと思った。


「いって!」


 背中に痛みが走る。

 この痛みは、まさか・・・・・・


「バカ兄貴!間違えんな!」


 一番意外だった彼女だった。

 会って早々に俺をバカ兄貴呼ばわりして、蹴りを入れてきた彼女だった。


「お、おま、なんで?」

「背中でも流してあげようと思ってさ。水着着てるから大丈夫だよ」


 なんだ、嫌、何がなんだなのかは分からないがとりあえず落ち着いた。


「これくらいでいい?」


 ボディタオルに、石鹸をつけ背中を洗ってくれる。


「いいよ、ちゃうどいい感じ」


 なかなかいい具合で洗ってくれる。


「そういえばさ、何て呼んだらいい?」


 もうお決まりの台詞だ。


「呼び方?普通にユイでいいよ」

「わかった、ユイだな。ところでさ、俺の呼び方はなんとかならないのかな?」

「何か文句でもあるの?」

「い、いや、ないです!」


 彼女は、念入りに俺の背中を洗ってくれる。

 腰から背中に、そして首へと


「おふっ」


 その瞬間、昼間感じたあの感触、いや、それよりも、もっとはっきりとした女の子の感触が伝わってきた。


「なにやって」

「こっち見んな!」


 振り返ろうとした瞬間、今度は顔に強烈な痛みがはしる。


「いっててて。な、なんで裸なんだよ!?」


 数秒ほど沈黙が続き、蛇口からこぼれる水の音がする。


「だ、だって・・・・・・」


 背後から細々と声が聞こえてくる。


「うち、こんな性格だからさ・・・・・・兄貴に好かれるにはこれくら

 いしなきゃと思って・・・・・・」


 いつの間にか「バカ」という呼称は消えていた。

 いや、そんなことよりも、なんだこの可愛い女の子は。

 まるで、別人みたいだ。


「だから、ね?」


 さらに、俺へと体を寄せてくる。

 彼女の心臓の音が聞こえてくる気がする。


「ま、待てよ!」


 俺は急いで彼女を静止させる。


「確かに女の子らしいユイも可愛い、いや猛烈に可愛い。でもさ、それ

 って作り物だろ?俺は本当のユイともっと仲良くなりたいんだよ」


 またしても、口から火が出そうなほどの恥ずかしい台詞を言ってしまう。

 きっと、昨日見たアニメのせいだ・・・・・・


「でも、それじゃ、サヤカやモモちゃんみたいに可愛くないよ?」

「ユイは、ユイだ。誰かと比べたりなんてするわけないだろ」

「お兄ちゃん・・・・・・」


 彼女の俺に対する呼称が変わる。

 でも、これは作り物ではなく、心から出たものだろう。


「それにさ、ユイだって十分、女の子らしいよ。だって、あんなに大き」

「この変態!変態バカ兄貴!」

「つめてっ」


 シャワーの水を一気に冷水にし、俺の背中へとかける。


「もう出るっ」


 ユイは、ドアを開け風呂から出る。


「ま、待てユイ。悪かったから」

「ちょっとだけ大好きだよ。バカ兄貴」


 俺の言葉に振り向き、そう残して去っていく。


 ユイには、サユリやモモちゃんとは、また違った可愛さがあった。

 冒頭で俺がイメージした「ツンデレ系」のデレの部分が見えたのかもしれないな。

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