第2話「一人っ子の俺と一人目の妹候補!?」

「お兄ちゃん、買い物についてきてくれない?」


 朝食を食べ終わり、リビングでくつろいでいた俺にザ・普通な妹候補が話しかけてきた。


「いいよ、行こう」

「本当?なら、準備してこよっと!」


 彼女は二階へと上がっていく。

 この世界では俺の部屋の隣に彼女達の部屋があるようだ。


 服を着替え仕度を済ませ彼女を待っていた。


「おまたせ~」


 花柄のワンピースを着た彼女が降りてきた。


「今日は、近くのスーパーに買い物にいくんだよ」


 彼女は、嬉しそうに俺の方を見る。


「何て呼んだらいいのかな?えっと、キミの事」


 なんせ、名前も知らないのだから、まずは、それを聞かないことには始まらない。


「サヤカって呼んでほしいかな~」

「サヤカか・・・・・・よし。行こっか、サヤカ!」


 少し兄貴っぽくしている俺に笑顔で彼女はついてきてくれる。


「あらっ、サヤカちゃんたち~どこ行くの?」

「近所のスーパーに買い物に行くんです」


 近所のおばあちゃんが話しかけてきた。昔から、よく知ってるが、ここでも同じような設定らしい。


「いつも、兄妹の仲がいいわね~」

「そんなこ」

「そうなんですよ~!もう、お兄ちゃんが私にベッタリで~」


 否定しようとした瞬間サヤカが即座に反応した。

 少し照れ臭かったが俺の腕に体を寄せてくるその姿が少しだけ可愛かった。


 おばあちゃんと話した後、五分程歩くとスーパーに着いた。


「何を買うの?」

「今日の昼御飯の材料だよ。お兄ちゃんの好きなもの作ってあげる 

 ね!」


 かごを手に取り、店内へと入る。

 俺の好きなものなんか、俺か、母さん以外にわかるはずながない。

 そう思っていたんだけど・・・・・・


「お兄ちゃんハンバーグ好きだよね?」

「あ、お兄ちゃん人参嫌いだよね?も~今日は、すりつぶしてあげるけ

 ど食べれるようになってよね~」


 サヤカは、ハンバーグの材料をかごへと入れていく。

 好きなものだけでなく、嫌いなものまで知っているとは・・・・・・


「なんで、俺の事、そんなに知ってんの?」

「それは、好きだからに決まってるじゃん・・・・・・も、もちろん兄

 妹としてだよ!」


 頬を赤く染めて、照れながら答えるサヤカは妹ではなく一人の女の子の顔をしていた。

 優しく、気を使うことができ、さらに可愛い。

 こんな完璧な人間もいるんだな・・・・・・


「あれっ、何してんの?」



 レジに向かう俺達に話しかけてきたのは、俺のクラスメートで嫌味な女であまり好きじゃないやつだった。


「隣にいるのって妹さん?」

「そうだけど」


 意味ありげに彼女は聞いてくる。

 こういうところが苦手なんだよな。


「その歳になって兄妹で買い物ってありえなくない?もしかして、シスコンとか?」


 何の遠慮もせず思ったことをそのまま声に出す、そういうたやつだとわかっていたから受け流そうとした。


「は?」


 俺の隣から突然発せられた、その言葉を皮切りに怒濤のラッシュ(もちろん殴ったりはしてないよ)が始まる。


「あのさ、兄妹で買い物をすることの何が悪いんですか?キモいって?

 そうやって人のことも考えず話すあなたの方がよっぽどキモいんで

 すけど」


 そこには、さっきまでと同一人物とは思えない、サヤカがいた。

 驚いたのは俺だけではなかったようで、先程、俺達を罵倒した彼女も同じようだった。


「か、勝手にすれば」


 そう言い残しそそくさとこの場から離れる。

 彼女のあんな姿をみたのは始めてだ。


「あの・・・・・・サ、サヤカ・・・・・・さん?」

「何かあった、お兄ちゃん?早く行こうよ!」

「う、うん」


 どうやらあまり触れてほしくは無さそうだ。


 会計を済ませスーパーをあとにする。


「あ、あのね、お兄ちゃん」


 帰り道、サヤカが話し掛けてきた。


「さっきのことなんだけどね・・・・・・」

「私、全然完璧なんかじゃなくて、特にお兄ちゃんの事を馬鹿にされた

 らすぐああなっちゃって」


 やっぱり気にしていたんだな。


「こんな妹、やっぱり嫌だよね?」

「そんなわけないだろ!だって、俺のために怒ってくれたわけだし」

「こんな私が妹でもいいのかな・・・・・・」


 涙をにじませながら、返事を求めてくる。


「あたりまえだ。俺の大切な妹だよ」

「お兄ちゃんっ・・・・・・」

「ありがとう。大好きだよ」


 サヤカは、一度手で涙をぬぐい、今までで一番の笑顔でこちらを向いた。

 俺は、この笑顔に一発KOされてしまった。

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