一人っ子の俺と三人の妹候補たち

ゆうぼう

第1話「突然現れた三人の妹候補達!?」

「こんなかわいい妹が欲しい~~!」


 某妹ものアニメをみて、心のなかでいや、声に出して叫んでいる。

 そんな痛々しい俺は、明日には高校2年生の始業式を控えた十六歳だ。

 始めの台詞からわかる通り俺には妹、それどころか姉弟すらいない一人っ子だった。

 そんな俺が妹という存在に憧れを抱くのは当然といえば当然だ。

 始業式前だというのに某妹ものアニメを深夜まで見ていた俺はいつのまにか寝落ちしてしまった。


「お兄ちゃん朝だよ」

「にいに朝だよ~」

「早く起きろよバカ兄貴!」


 翌朝目が覚めると一人っ子のはずの僕の部屋に僕のことを「お兄ちゃん」と呼ぶ三人の女の子がいた。


「早く起きて~」


 優しく肩をたたいてくる。

 黒髪ショートヘアーの優しそうなザ・普通といった女の子だった。


「にいに~」


 小さな体で僕の上に乗っかってくる。

 少し茶色がかった髪をツインテールにした、いかにも妹らしい女の子だった。


「とっとっと起きろ!」

「ゴホッ!!」


 無防備な俺のお腹に容赦なく蹴りをいれてくる。

 金髪ロングヘアーで、アニメでは「幼なじみツンデレキャラ」と表現されそうな子だった。


 三人は僕が目を覚ましたのを確認すると部屋から出ていった。

 まだ、心の整理ができていない。

 ここが夢なのか現実なのか。


 さっきは寝ぼけていなのかなぁ、そう思いながらリビングへと向かう。

 扉を開けるとやはりそこには三人の女の子がいた。 


「ごはんできたから早く座って」


 そこには、味噌汁、ご飯、魚とバランスの良い食事が並べられていた。

 それは、THE・普通な女の子が当たり前のように作ってくれたものだった。

 僕と三人の女の子達で食卓をかこむ。


 そうか、これは夢なんだ。

 だとしたら思いっきり楽しまないと損だよな。

 俺が決意した瞬間だった。


「にいに、これは夢なんかじゃないよ?」

「現実でもないけどね」


 ツインテール妹キャラと幼なじみツンデレキャラが言葉を発する。

 まるで僕の考えたことがわかったかのようなタイミングだった。

 まだ、頭が混乱している僕のことも考えず更に彼女たちは続ける。


『私達の中から一人妹を選んでもらいます』


 さっきまでキャラがたっていなかったザ・普通な子でも突然こんなことを、言い出せば一気にキャラがたってくる。

 頭はさらに混乱してきた。

 状況を整理する時間も与えられず、「妹選抜試験」(そう呼んでいいのかはわからないけど)が開始される。 


「で、結局ここは、どこなの?」


 俺の問いかけにプログラミングでもされたかのように、息ぴったりとこの世界について説明してくれた。


「お兄ちゃんと私達が一日だけ一緒に暮らして」

「にいにが、今夜選んだ妹が」

「バカ兄貴の現実での本当の妹になるんだよ!」


 それぞれの俺に対する呼称の違いは大体わかった。

 現実での俺の妹になる?

 そんなことが本当にありえるのか?

 でも、真剣に話す彼女達を疑うことなんて、その時の俺にはできなかった。



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