咲夜桜の日常 2

「なんか、見知った顔が多いですね……」

「半分以上前のクラスと変わらないメンバーだからなー」

桜と柚希は全校集会と学力テストが終わり、帰ろうとしていた。

「結羽はまだですかね」

「教科数は同じだからHLが長引いてるんじゃね?」

柚希が答えると、

「おねーちゃーん、ゆずにーちゃーん」

結羽が玄関から元気よく走って来た。

「どーん♪」

わりと勢いそのままで抱きついてきた結羽を桜が受けとめる。

「……お疲れ様です結羽。ただ、けっこう痛いですよ?」

「あはは! ごめんなさーい!」

呆れ混じりに注意する桜に楽しそうに返す結羽。ちなみに柚希は逃げた。

「ゆずにーちゃんはなんで逃げたの?」

「痛そうだったからさ!」

悪びれずに言う柚希。

「事実わりと痛いですからね」

「普通わりとじゃすまない勢いだったんだけど……」

全力疾走のまま突撃されれば痛いでは済まないだろう。

「まぁ、慣れてますし」

「……さいですか」

柚希が呆れた顔で言い、歩き始める。

柚希に続き二人も歩き始め、五分ほど歩くと、

「んー?」

結羽が首をかしげる。

「どうした?」

「なんか揺れてる?」

止まってみると確かに少し揺れている。

「珍しいな」

「そうですね、地震なんてしばらくなかったですしね」

「……地震じゃない」

結羽が小さく呟き、目が少しだけ細くなる。

「ゆずにーちゃん、おねーちゃんをよろしく!」

「あいよー」

返事を聞くと勢い良く走って行った。

「どうしたのかしら?」

「まー、気にすんな」

気にはなったが柚希が歩き始めたため、桜も歩き始める。

しかし、

「グルルルル……」

目の前に狼のような《もの》が道をふさぐ。

「……うわー、待ち伏せされてたのか?」

「……何あれ」

柚希はめんどくさそうに、桜は疑問に思い思わず呟く。

「……冷静っすね桜さん」

「なんですかその話し方。なんか一周して冷静になりましたよ」

目の前の狼のような《もの》はあきらかに3メートルを超えていた。

「あー、わからんでもない」

「柚希は知ってるみたいですが?」

「うーん、どう説明したものやら」

のんきに話しているが目の前の狼は今にも飛び掛かって来そうだ。

「みーにーちゃんに説明は投げようそうしよう、そして今は……」

「そして今は?」

「全力で逃げる!」

柚希は桜の手を取って狼の方に向かって走り出す。

「え!そっち!?」

普通は後ろに逃げるだろうが狼に向かって走り出す。

「お、あったあった!」

ウエストバッグに手を入れて探していたものは、

「植物の種?」

「そのとーり!」

柚希は植物の種を狼に向かって投げ、

「育て!」

叫ぶと種から蔓が伸びだし、狼を拘束する。

「……あら、意外と力無いのか?」

「……もうなにがなにやら」

3メートルほどある狼が突如育った植物の蔓に縛られ身動きがとれなくなっている。

「あー!おねーちゃんをよろしくって言ったのに!」

結羽が上から降ってきた。

「ゆーちゃんが走って行ってすぐに出てきたんだからしゃーないじゃーん」

「むぅ、私も気づけなかったけどさー」

「……とりあえず一言言わせてください」

黙っていた桜が口を開き、二人の肩が跳ねる。

ゆっくり桜の方へ顔を向けると怒った顔で、

「結羽はスカートなんですから気をつけなさい!」

「「そっち!?」」

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咲夜家の不思議な日常 シキ @yukishiro8813

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