咲夜桜の日常

「バレてますよ、柚希ゆずき

「あらら、なんでバレるかな」

校門の裏側に髪の短い男が立っていた。

八重やえ柚希、桜の同級生でクラスメイト。桜よりもやや大きい程の高校生としては小さめの身長。

いたずら小僧のような楽しげな顔で桜に聞く。

それもそのはずだろう。桜の隣を歩いていた女子生徒が声をあげて驚くほどに気配がなかった。

「あたりまえでしょう。慣れましたよ」

「いや、慣れでどうにかなるものじゃないんだけど……」

呆れた表情で桜の隣を歩く柚希。

「そういえは結羽が兄さんにCD一万部突破して高笑いしてたの言ってましたよ」

「えぇ⁉誰もいないとこで笑ってたのに……流石ゆーちゃん、俺に気づかれずに盗み聞きするとは」

「運動神経いいですからね」

「うん、まぁ、そうだね……」

そういう問題じゃないんだよなーと柚希が呟く。

「まぁ、なんでもいいです。今日午前中で終わりますが遊びに来ますか?」

「どうすっかなー。みー兄ちゃんに高笑いしてたのバレてるしなー。ま、いっか」

「ちなみに悪い顔してましたよ」

「え、マジすか……。よっし、買収しよ」

「はいはい。来るって連絡しておきますね」

話してるうちに教室に到着する。

「そういや、クラス替えだけど確認しなくてよかったん?」

「どうせ貴方と同じクラスでしょう?それに」

「それに?」

「私のも確認してるでしょ?」

「そりゃもちろん」

大きいことから小さなことまでいろいろ調べる柚希は学校内でちょっとした有名人である。常に手帳を持ち歩き、(腰に手帳用のウエストバッグをつけている)学校内で起こったことはだいたいメモされている。

「そして何組かを言わないと言うことはいつもと同じということでしょう?」

「ま、変わってたら初めて変わったなって言うしなー」

「今年も一年、よろしくお願いしますね柚希」

「こちらこそだな」

二人は笑いながら新しい教室に入る。

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