咲夜家の日常 その3
「送ってくれてありがとうございます、兄さん」
「お兄ちゃんありがとねー」
「あいよー。んじゃ、授業寝ないようになー」
美桜が車の窓を開け返事をする。
「大丈夫ですよ。うるさいのが居ますから」
「むぅ、気をつける」
桜は楽しそうな、結羽はふてくされたような顔をする。
「ちゃんと起きてたらクッキー作ってやるから頑張れな?」
美桜が結羽の少し膨れた頬を突っつきながら笑う。
「ほんと⁉じゃあ頑張る!」
ふてくされたのはどこかに飛んでいったのか、笑顔で学校に走っていく。
「行ってきまーす!」
学校は同じ敷地内なのだが中等部と高等部の校舎は違うため桜とは別々になる。
二人に手を振りながら校舎に走っていく結羽に二人は微笑みながら手を振り返す。
「やー、ほんと可愛い妹だな」
「そうですね、兄さん」
結羽が校舎の中に入ったのを見ると、桜の雰囲気が変わる。
「さて、兄さん?あんまり甘やかさないようにって私言いましたよね?」
桜は微笑みながら、氷のような冷たさで美桜に言う。
「結羽が可愛いくて甘やかしてしまうのはわかりますが、結羽の為にならないと何度言えばわかるんですか?私だってもっと甘やかしたいのに」
美桜を責めるように言っているが本音が漏れてしまっている。
「結羽の為ならちゃんと起きて授業を受けた方が結羽の為だろ?俺は結羽のやる気の為に甘やかしている」
美桜がこれなら反論出来ないだろとどや顔をしている。顔がいいため似合ってはいるが、見慣れている桜はいらっとする。
「……はぁ、兄さんに注意するのが間違ってましたね」
桜の雰囲気がいつもの優しい、安心する雰囲気に戻る。
「兄さん、なんだかんだで私達の為に考えて甘やかしてくれるもんね。いつもありがと、お兄ちゃん」
いつもと違う口調。兄に素直に甘えている時は少し幼い、年相応の話し方をする。
そんな可愛い妹に美桜は微笑みながら頭を撫でる。
「注意してくれるのは助かってるよ。考えてはいるけど二人の妹が可愛いから度が過ぎることがあるからな」
美桜は苦笑しながら言う。
「桜も授業中に本読んだりしないようにな?」
「ばれてた?」
桜はいたずらがばれた少女ような、幼い表情で笑う。
「可愛い妹のことだからな。本読まなかったら桜の好きな甘さ控えめのクッキー作っておくからな」
美桜は頭を撫でながら微笑む。
「じゃあクッキーの為にも頑張るね、お兄ちゃん」
なんだかんだ自分も甘やかす兄に、それを嬉しく思う自分に笑いながら高等部の校舎に歩きだす。
「いってきます、お兄ちゃん」
「いってらっしゃい、桜」
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