咲夜家の日常

「あつい……」

さくらが目を覚ますと蒸し暑かった。

冬が終わり、今日から新学期が始まる春。なのに真夏のように暑く、汗で寝間着の浴衣がべたつく。そしてお腹の当たりに温かく重いものがあり体を起こせない。

「重い?」

不思議に思い自由に動く腕で布団をめくると、

「くー……すー…………」

……真っ白な毛玉があった。

「暑いわけね……」

桜は苦笑しつつ、白い毛玉に話しかける。

結羽ゆう、起きて」

結羽と呼ばれた白い毛玉、もとい少女は、

「やー、まだねむいー……」

と言って起きる気配がない。

「くー……」

それどころか桜に全身でしがみつき寝始める。

どうしたものかと考えていると部屋に近づいてくる足音が聞こえてくる。

「いい加減飯食わないと遅刻するぞ」

ノックの一つもなく入って来たのは二人の兄である美桜みおだ。ラフな長袖にジーンズ、着物などで上に羽織るような羽織を着ている。気だるげだが顔が整っているためただ立っているだけで絵になる。

「兄さん、ナイスタイミングです。妹とは言え女の子の部屋に無断で入ったのは一言言いたいですがとりあえず助けてください」

「へいへいすみませんでしたー。結羽、そろそろ起きろ。飯だ」

「んー、お兄ちゃん?まだ眠いー……」

「はいはい頑張って起きようなー」

美桜が結羽の顎の辺りを指先でかりかりとすると、

「がぶっ!」

噛みつかれた。かゆかったようだ。

「お兄ちゃんのいじわる……」

結羽が起き上がり、美桜の隣に立って伸びをする。二人の差が凄い。大人と子供を通り越して巨人と小人みたいになっている。

170cmと130cmと言えばよくわかるだろう。

「おはよっ!お兄ちゃん、お姉ちゃん!」

結羽が笑顔で朝の挨拶をする。小柄な体に、くせの一つもない真っ白で長い綺麗な髪。目が大きく整った小さい顔。控えめに言って美少女である。

「おはようさん」

「おはよう結羽。ところでなんで私の布団で寝てたの?」

「一緒に寝たかったから!」

笑顔で結羽が答える。

「ほんと可愛いわね」

桜も立ち上がり結羽の頭を撫でる。桜もあまり身長が大きい方ではないが結羽が小さいため身長差がある。ちなみに149cm。

「ほら、いいかげん着替えてきな。皆待ってんだから」

「はーい」

「桜も着替えて早く来いよ」

「わかりましたよ兄さん」

そう言い残し、結羽と美桜は桜の部屋から出ていく。

「さて、着替えますか」

桜は浴衣の帯を外し、制服に着替える。

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