【創作BL】心をあげる

 そういえば、指輪を贈るだなんてことはこれまでの『おつきあい』の中でも初めてのことだった。


「生涯最初だよ、なんかすごくない?」

「大げさだな」

 肩を竦めて笑ってみせる姿に、いとおしさがこみ上げる。知っているから、ちゃんと喜んでくれていることくらいは。

 左手の薬指は心臓に繋がっている。

 ただ慣例に従っただけ、といえばそれまでではあるけれど――

 心を捧げあいたいと思える、生涯初めて――そしてきっと、最期の相手に出会えた証がこうしてここに刻まれている。


「……大事にしような」

「うん」


 まだ真新しい銀の指輪を前に、もう何度目かわからないあまいため息がこぼれ落ちていくのにただ身をまかせる。

 ほら、もう何も怖くなんてない。



第三十八回 #Twitter300字SS お題:贈り物

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る