【男女/恋愛】あかのいと

 大切な試験に備えてのお守りがほしい。

 可愛い恋人からのたってのリクエストによって残した"それ"は、柔らかな白い肌の上へと、艶かしさを覚えさせるかのようないやに鮮やかな朱を落とす。

「ほんといいの、それで」

「いいの」

 ためらうこちらを前に、きっぱりと強気な言葉が返される。

「翔くんの証でしょ、これ」

 愛おしげになぞりあげる指のその下、柔肌の上へと滲む朱で刻まれるのは大仰にうねる字体で記された自身の名前。いつも答案用紙に捺してやる判子の跡だ。

「これで満点だって取れるよ、ね?」

 得意げに笑う顔を前に、どこか複雑な気持ちがこみ上げる。


 男としてあらゆる意味で試されている気がするのは、きっと気のせいではあるまい。



第39回 #Twitter300字ss

お題「試す」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る