　二十歳になるまで不安だったこと

　：お酒が好きになれなかったらどうしよう

「らしいねえ」

　くすくす笑ってみせる恋人を前に、真面目な顔をして私は答える。

「だってつまんないでしょ、付き合えなきゃ」

「そりゃそうだけど」

　遠慮がちに口を濁す姿を横目に、私は答える。

「美味しいって思えてうれしかったの。ちゃんと、荘平さんと同じだって」

　同じ楽しみを分かち合える『大人』にまたひとつ、追いつけたのだと。

「そんなこと思ってたの？」

「そりゃまぁ、子どもだったので」

　赤らんだ瞳をそらしながらぽつりと答えれば、耳までみるみるうちに赤くなる。

「……ありがとう、大人になってくれて」

　ささやき声に、火照らされた心はやわらかに滲むばかりで。

第三十七回 #Twitter300字SS　お題：酒

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