君のいない季節にも(BL)

 視線をあげたその先に広がるのは、生まれ育った国で見るのと同じ、やわらかな薄桃の花々が咲き溢れるさまだ。

「日本が恋しくなった?」

「そんなことないよ」

 わざとらしく素っ気なく答えた途端、すぐさまみるみるうちに後悔が押し寄せる。ちがう、そんな風に言いたいわけじゃない、ほんとうは。

「カイ、」

「……ごめん」

 力なくつぶやきながら、花びらの絨毯をゆっくりと踏みしめる。


 ねえ、ロンドンにも日本と同じように桜が咲くんだよ。おかしいよね?

 生まれてこの方、ずっとそばにいてくれたはずの相手を思いながら問いかける僕の下へと、まるで返事の代わりのようにはらはらと花びらは舞い降りる。


 変わらない光景は、不在のありかを際立たせる。




第四回Text-Revolutions 300字SSポストカードラリー お題:桜

「ジェミニとほうき星」(https://kakuyomu.jp/works/1177354054880500070)海吏とマーティン

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