プレゼントフォーユー(男女/恋愛)

「しょーうくん」

 子どもみたいな呼び声と共に集合ポストの影から現れた人影は、真っ赤な包装紙にラッピングされた包みを差し出してみせる。

「ハッピーバレンタイン!」

 やれやれ、と大げさに肩を落とし、声をひそめるようにしながら俺は答える。

「学校で渡せばいいだろ」

「したらプレゼントボックス越しでしょ」

 わざとらしくいじけてみせながら告げられる言葉はこうだ。

「面倒だよね、先生って」

「面倒が起きないためのルールなんだよ」

 もう起きてますが。


「ほら、こっち」

 華奢な手首をぐっと掴むようにすれば、長い睫毛がぱちぱちとしばたかれる。

「入っていいの?」

「目立つだろ、ここじゃ」

 続きなら、部屋の中でゆっくり聞いてやるから。



第三十四回 #Twitter300字SS お題:渡す

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