にじみ(BL)

「こういう透明な傘ってさ、誰が考えたんだろうね」

「さぁ、」

 雨だれの輪唱とともに、くぐもったささやき声が鼓膜へとやわらかに響く。

 視界を遮らないビニールの傘は、滴り落ちる滴に打たれながらはらりと舞い落ちていく花びらのさまを見送るのにはめっぽう都合がいい。

 ぱらぱら、と弾けていくビーズの粒を見送るそのうち、舞い降りた花びらのひとひらは、うすい膜越しの世界にやさしい色を落としてくれる。

「きれいだね」

「ん、」

 灰色にけぶる世界の向こう側に見える恋人の姿を前に、力なくぽつりとささやく。

 滲んだ横顔が泣いているように見えて、ほんのすこしだけさびしくなるだなんてことは、もちろん口には出さないままで。



第三十三回 #Twitter300字SS お題:傘

「ほどけない体温」(https://kakuyomu.jp/works/1177354054880429454)周と忍

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