散る、散る、みちる(BL)

「なぁ、なんかついてる」

 おかえり、の後すぐに口をついてでた言葉がそれだ。

 誘われるままに差し伸ばした指先に触れるのは、やわらかな薄桃色の花びらで。

「裏の公園かなぁ。ちょうど満開でさ、すっごい綺麗だったよ。周にも見せてあげたいなって」

 うれしそうに瞳を細めて話す姿に、さわさわと音も立てず心を揺らされる。

 名残を惜しむ気持ちが、ひとひらの花びらを連れ帰ったのだろうか--なんていうのはきっと、勘ぐりすぎだろうけれど

「見に行こっか」

「いまからでもいい?」

「帰ってきたとこだろ」

「周がいいならだけど」

 肩をすくめて答える仕草に、いとおしさがにじむ。

「断ると思った?」

 答える代わりのように、指先をそっと結び合う。



第三十一回 #Twitter300字SS  お題:散る

「ほどけない体温」(https://kakuyomu.jp/works/1177354054880429454)周と忍

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