「お姉ちゃんって損だなって、ずっと思ってたの」

　少しだけ強気な口ぶりで、祈吏は言う。

「お姉ちゃんだからしっかりしなきゃって思うのに、二言目には『女の子だから』って。弟なのに、ちっとも甘えてくれないし。言ったのよ、好きな人が出来たらお姉ちゃんに真っ先に話してねって。なのに、ずっと教えてくれなかった」

　潤ませた瞳をぎゅっと細めて紡がれるのは、こんな言葉だ。

「ねえ、祈吏のお兄ちゃんになってくれる？」

　答える代りのように、世界でいちばん大切な妹を、僕は黙ったままぎゅっと抱きとめる。

第一回尼崎文学だらけポストカード企画

「ジェミニとほうき星」（https://kakuyomu.jp/works/1177354054880500070）マーティンと祈吏

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