イッツ・オンリー・ア・ペーパームーン(男女・恋愛)

「ペーパームーン?」

 知ってる? という問いかけを前に、ふわりと涼しげに笑いながら彼は答える。

「ずいぶん懐かしいなって」

「音楽の授業で聞かせてもらって」


 ただの紙の月でも、あなたの愛がそこにあるというのなら信じられるわ


 明るいのにどこかもの悲しげに聞こえたのは何故だろうかなんて、聞けるわけもないけれど。


「桐緒さん。左手、出してくれる?」

「こう?」

 請われるままに差し出した左の手、薬指の上へとそっと、淡い黄色の付箋が巻きつけられる。

「ほんものはまだ重いだろうから、ね」

 得意げに笑いかけながら、彼は答える。

「ねえ、信じてくれる?」

「……もちろん」


 あなたの愛が、そこにあるというのなら。



第二十六回 #Twitter300字SS  お題:月

「ピアニストの恋ごころ」(https://kakuyomu.jp/works/1177354054883204838)荘平と桐緒

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