回転木馬の見る夢は(男の友情/ブロマンス?)

 住宅展示場の片隅に突如現れた夕暮れの灯に浮かび上がるメリーゴーランドは、夢うつつを行き来するかのようなあやふやな存在感でこちらを圧倒させる。

「いいよねえメリーゴーランドって」

 ぬるくなった缶コーヒーをちびちびと口にしながら、傍らの男は呟く。

「ガキのころね、すげえ憧れてたの。大人になって子どもが生まれたら乗っけてやんだって思ってたんだけどさぁ」

「……まだ間に合うだろ」

 ちらちら、と投げかけられる視線に、期待通りに冷たく答える。

「本気で言ってんの、それ?」

 目線を逸らしながら、ポケットの小銭を手で弄る。一回三百円で叶う儚い夢に、俺は手出しをしてやっても良いのだろうか。



第一回静岡文学マルシェポストカードギャザリング参加作品

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る