げんじつちほー編

「何故にキリン?」

 夢から覚めた私が最初に思った内容はそれだった。

 アニメけものフレンズにハマってた私は、常日頃からジャパリパークに行きたいと思っていた。冷たく非情な人間だらけの辛い辛い現実から逃げて、温かく優しいフレンズがいっぱいのたのしーたのしージャパリパークでのんびり楽しく暮らしたいと思っていた。

 そして、夢とはいえ、その願いが叶った。私はけものフレンズの世界に行くことができたのだ。

「でも何故にキリン?」

 だが、どういうわけか夢の世界でのヒロインはアミメキリンのフレンズだった。

 誤解が無いように最初に言っておくが、私は別にキリンが嫌いというわけではない。

 でもメッチャクチャ、この世で最高に、フレンズの中で1番、好きというでもない。

 私はけものフレンズでは、PPPの5人が好きだ。本音を言えば、彼女達に夢に出てきてもらいたかった。でもPPPどころかペンギン1羽すら登場しなかった。

 今1度、私はこの言葉を述べよう。

 何故にキリン?

 夢は自身の心理状態を写す鏡だと言うが。深層心理の私はキリンが好きなのだろうか。でもなー、どちらかと言えば、私は動物の中では猫が好きなんだけどなー。

「あ、でもガオジュラフは好きだったな。悪鬼貫徹ネックスラスト!! ってな」


 あの夢を見てから、数日が経った。

 でも、私があの夢の続きを見ることは、再びあのどりーむちほーに訪れることは無かった。

「……」

 私は哲学や倫理学が大っ嫌いだ。

 だがそんな私には、ある自論がある。

 世界はどうやって生まれるのか?

 その答えは、人それぞれ、だ。皆自分の考えを持っていることだろう。もちろん私にもある。

 私の回答は、『誰かが想像した時に、世界は創造される』だ。

 どこかの誰かが、こんな世界があったらいいな、と思った瞬間に別の次元に形成される。と、私は思っている。

 だから、私が見た夢の世界も、私が見た瞬間に別次元に創造されたのだ。あのどりーむちほーが生まれたのだ。

「あのフレンズ達、どうなったんだろう……?」

 だがあの夢は、かなり最悪な状況で、しかもかなり中途半端な場面で終わってしまった。

 はたして、あの世界の続きはどうなってしまうのだろうか?

 フレンズ達はあのままあのブラック社長の奴隷として生き続けるのだろうか?

 かばんさんの記憶は2度と戻らないのだろうか?

 あの世界の私は、これからどうするのだろうか?

 考えれば考えるほど、頭が痛くなる。そしてあんなバットエンドな世界を生み出してしまった創造主として、かなり責任を感じている。

「どうしたものかな」

 そんなふうに、他人から見ればくだらない悩みを抱いている私に、転機が訪れた。

 それがここ、カクヨムだ。

 カクヨムでは、何種類か2次創作が認められている。けものフレンズもその1つだ。

 それを知った私は、これだ! と思った。

 夢はバットエンドで終わってしまった。

 だったら、今度は小説という形で続きを書けば、あの世界をハッピーエンドにすればいい。私はそう考えた。

 決意新たに、私はさっそくカクヨムを開く。

 そして、とりあえず、あの日見た夢をほぼそのまま書き、投稿した。……他に書いた小説より評価が高いのが、なんだか複雑だけど、この際今は目を瞑ろう。

 問題は、ここからだ。

「この中途半端かつ最悪な状況を、どのようにしてハッピーエンドにするか、だな」

 私は夢小説を読み返しながら、考える。

 この物語をハッピーエンドにするには……。

  ・あのブラックな社長をどうにかして倒す。

  ・フレンズ達の目を覚まさせる。

  ・かばんさんの感情と記憶を取り戻す。

 この3つが重要になってくる。

 かばんさんには悪いが、3つ目は省略してもなんとかなる。男を倒して平和を取り戻した後に、『これからかばんさんの記憶を取り戻す旅に出よう』と、俺達の冒険はこれからだエンドにすればいい。

 だが、その男を倒す方法が、1番重要な場面が思いつかない。 

「うーむ」

 読めば読むほど最悪な状況だった。主人公はマスクを付けないと他人と話せない、何の能力も持たない人間。敵は短時間でフレンズ達をまとめてしまうほどの統率力を持つ男。フレンズの半分は男に洗脳されている。頼りのかばんさんはほとんど植物状態。

 あれ? これ、詰んでね?

「せめて主人公にもう少しスペックあればな」

 何かしらの超能力を持っているとか。体力が人1倍あるとか。ジュウオウジャーみたいに、人間だけど鳥とゴリラの力を持っているとか。

 まったく、夢の中なんだから、何か特別な力を持っていろよ私。

 ……まあ、無い物をねだってもしかたない、か。

 あのジャパリパークに、あのどりーむちほーにある物で解決するしかない。

「くく、面白いじゃん。……いいよ、見せてやるよ。自称小説を書くフレンズ(得意とは言っていない)の底力を!」

 私はニヤケながら、筆を、正確にはキーボードを走らせた。

 


 

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