ペン先について

 ペン先は深淵な万年筆の世界でも特に奥が深い。とにかく金でできた万年筆が持つ夢のような書き心地を堪能することなしに死んでしまうのは勿体ない。ここでは金のペン先について書こうと思う。

 ペン先は字幅という基準を通して見ると良いだろう。字幅が太くなる程、より滑るように書ける。もともとアルファベットを筆記するための道具なので、太い字幅の万年筆で英語なんか書くとたまらない。英語嫌いの人は道具を万年筆に変えると楽しくなるかもしれないから試してみるのも良いだろう。

 また日本語を筆記するために設計された特殊なペン先もある。代表的なものはPILOT社のウェーバリーだろう。万年筆は左から右へ引くよう作られているため、左利きの人に通常の万年筆は適さない。その点筆記の角度を問わないウェーバリーは安心して勧められる。

 さてペン先最大の特徴は使用者の癖を覚えるところにある。ペン先にはイリジウムという金属が使用されていて、これが使うたびに極少しずつ摩耗する。するとペン先が使用者に最適化され、書き心地の良さはここに極まる。

 使うたびに私だけのものになる私だけの万年筆。信頼できる道具は手元にあるだけで気分が良くなるものだ。

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