価格帯と最初の一本

 万年筆は下限が千円、上限は無限という値段の幅を持つ筆記具である。万年筆に興味があるというビギナーにはPILOTが出している「カクノ」という製品が一押しである。見た目の安っぽさが気になるという人にはドイツのメーカーでLAMYが出している「サファリ」が良い。両方とも安定した品質と共に、多くの人間を万年筆に没頭させる原因を作る罪深い品である。

 価格の差はペン先の素材が金かどうかでおおよそ決まり、上記に紹介した二つは金ではない。例外もあるが一万円のラインを超えると金製になる。最もメジャーな製品はPILOTの「カスタム74」シリーズだろう。

 万年筆の特徴である滑らかな筆記感は金のペン先で真価を発揮するが、使い方の習得にも上記がやはり良いだろう。カクノもサファリもペン先がステンレスなので丈夫である。金製に比べて気軽に使えるから、その間に万年筆という魔性に慣れればよいのだ。

 また安価帯の製品は工場生産の品であるから試筆が要らない。たまには不良品もあるのだろうが当たったことがない。インターネットでこっそり買ってみれば良いだろう。ペン先は細字が良い。今でこそ細字は使わなくなったが、最初は細字でよかったと思っている。普段使うシャープペンシルやボールペンに使用感が近いから自然に使えるのだ。

 余談だが万年筆の楽しみにインクがある。様々なインクの中から好みの逸品いっぴんを見つけた時の喜びは得難いものだ。高級品を常用するようになっても先に手に入れた万年筆で新しいインクを試したり、無駄になることがないから安心するとよいだろう。

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