第四章①
八月。
先月公表された『神』による選挙権の買収問題を受けて、ニートたちの一斉検挙が行われた。これは公職選挙法に関連する問題のため、検挙は警察と検察の手によって行われることとなった。
だが大人しく彼らが捕まるわけもなく、かなりの数のニートが行方をくらませていた。ニートたちを取り逃がしたのは、単純に人手不足が原因だった。
その後の調査で野党だけでなく与党にも買収に関わった政治家がいたのが発覚し、その対応に当初予定していた人員を大幅に割かなくてはならなかったのだ。
逃げ出したニートの捜索を行うも時既に遅く、ニートたちは自分の身を守るために同じニートに助けを求めた。
元々年金を払うのに余裕のあったニートが別のニートを面白半分で助け、そうしたニートの小規模グループを、ネットが結びつけた。
そしてそれらのグループを、日本に復興されると都合の悪い国や人が新たな『神』として金銭的に支援。ニートたちによる一つの巨大派閥が誕生した。
その名前は、『ニート解放戦線(NEET Liberation Front)』。略称NLF。
そもそも日本に存在するニートの総数は平成十四年以降、少子化問題に関係なくほぼ六十万人台で安定して推移し続けている。ニートは元々、十年以上前から巨大派閥だったのだ。
だからこそ、政府はニートの問題を解決することが日本の少子化を解決できる一つの道と考えて特別国家公務員法を施行し、また膨大な数を誇るニートたちの選挙権を狙い『神』のターゲットにされた。
徒党を組んだニートたち、NLFは資金援助を受ける『神』や、助けを求める同じニートを守るため、積極的にニート狩りの妨害工作を中心とした、反政府活動を行った。NLFの活動により、NLFに所属していないまでも脱走兵となるニートの数が増え始めた。
事態を重く見た政府は与野党の選挙違反者逮捕の影響を受けつつも、遅まきながら警察と自衛隊の連携を指示。協力してNLFに当たるよう声明を発表した。
特別国家公務員法が施行されてから、三カ月。
夏真っ盛りのこの季節。一段と熱く、夏休みに入ったということもあり、体の熱を発散するためにプールや海に訪れる人も日に日に増えている昨今。
夏の暑さに比例するかのように、ニート狩り部隊の戦いはますます熱を帯びていった。
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