第三章③

 その部屋で一番目立っているものは、ディスプレイだ。六台の大型ディスプレイが二行三列で、スモークガラスのテーブル上に並べられている。

 上の行にある三台のディスプレイには、それぞれあるグラフが表示されている。株の価値を示す、箱ひげ図だ。株の値が下がった箇所は塗りつぶされ、値が上がった箇所は白抜きとなっており、視覚的に株の価値が見やすいようなデザインになっている。

 よく見ると、三台のディスプレイに表示されている株の銘柄はまったく同じ、野党の中心メンバーを支援している、大手流通グループのものを表示していた。違うのは、株価のグラフを表示している証券会社だ。

 株を取引する証券会社は、それぞれ株価の変動予測を出している。それらを見比べてどの銘柄に投資するのかを決めるために、ディスプレイごとに取引している証券会社別で同じ銘柄を表示させているのだ。

 同じく下の行にある三台のディスプレイにも、同じような箱ひげ図が表示されている。こちらは株ではなく、外国為替のやり取りをするFXだ。こちらも同じ銘柄、近隣諸国のものが証券会社別にディスプレイ上に表示されていた。

 それら六つのグラフを表示するためのディスプレイにつながっている、テーブルの下に配置された大型のタワーサーバから、廃熱を行うためにファンが必死になってうなり声が聞こえてくる。

 そのテーブルの前にはさらに七枚目のディスプレイ、ノートPCが設置されている。ノートPCのキーボードを、メッシュチェアに座っているあるニートがリズミカルに叩いていた。

「株価は、見なくていいのか?」

「必要ないさ。株価の動きはランダムウォークだ。ウィーナー過程を元に組んだ僕のプログラムが、勝手に利益を上げてくれる」

「……そんなにうまくいくのか?」

「いくわけないだろ。いったら今頃誰もが億万長者さ。想定外のことが起きたら、アラートを鳴らすようにしている。必要があれば、僕が自分で操作するよ」

 こちらを振り向きもしないニートは一瞬だけキーボードを叩く手を止め、並べられているディスプレイの間を指差した。

 俺はその右人差し指の先に視線を向けた。ディスプレイとディスプレイの間に、パトカーなどについていそうなランプが見えた。何か異常が発生した場合、あのランプが点灯する仕組みになっているのだろう。

 視線を戻すと、ニートはまた一心不乱にキーボードを叩き始めていた。まるで、それ以外興味がないというような必死さだ。

 プログラムが誤動作を起こせば株やFXで大損をするかもしれないというのに、ニートの視線は手元のノートPCから片時も離れない。

 俺の位置からでは表示されている内容は見えないが、その予想は出来ていた。

 ほぼ確実に予想通りだという嫌な確信を持ちながらも、俺は言葉を重ねていく。

「面白のか? それ」

「……面白いか、だって?」

 俺の質問に、ニートが反応した。俺が部屋に入ってきた時から断続的に続いていたキーボードの音が、止まる。

「そんなの、面白いに決まっているだろ?」

 椅子が回転し、ニートが俺と今日初めて視線を交わした。

その顔は、美しかった。

 皮肉下に口角を吊り上げているため台無しになっているが、顔は美の化身を表した彫刻のように整っており、髪は太陽の光を存分に浴びた稲穂のような黄金色。

 そんな誰が見ても美少女に見える華奢なこのニートの名前は、野口 茂樹(のぐち しげき)。性別は男で、誕生日は五月十三日。いわゆる、美男子というやつだ。

 だが、いかに美少女だろうが美男子だろうがニート狩りには関係ない。年金が納付されて手続きが行われれば、ニートは誰であろうと、狩る。

 しかし、俺は野口を狩れない理由があった。野口は、ただのニートではないのだ。

「……相変わらず、元気そうだな」

「おかげさまでね。僕一人の年金を納めるのには、苦労していないよ」

 そう。野口は、デイトレードを行うニート、いわゆる『ネオニート』なのだ。

 名前こそニートと付いてはいるが、一定以上の収入を得ている。

 その収入源は、野口が行っているようなデイトレードやブログなどの広告収入など、収入源は主にインターネットに依存しているものがほとんどだ。

 しかし、合法的な手段で収入を得ている以上、ネオニートは立派な労働者。俺が野口を狩ることが出来ないのは、単純明快。野口は年金納付者なのだ。

 既に野口は自分自身の特別国家自衛官になる権利を有しており、それを行使している。

 特別国家自衛官にならないという、権利を。

 これでは例え野口のようにほとんど外に出ず、他のニートと同じように引きこもっていても、俺には狩ることができない。

 そのことを苦々しく思いながら、俺はテーブルの下に置かれているサーバを指差した。

「何でノートPCなんて使ってるんだ? サーバがあるんだから、そっちを使えばいいだろう」

「このサーバはデイトレード専用さ。他の事にリソースを割いて、肝心の取引が出来なくなったら困るだろ?」

 野口はわざとらしく、軽く肩を上げた。

「それに、どうせやるなら、手元の画面で集中してやりたいからね」

 そう言って、野口はメッシュチェアをコマのように回し、またノートPCに体ごと視線を向けた。

 今の俺は、きっと苦虫をかみつぶしたような顔をしているに違いない。

 そう思いながら、野口の方に近づいていく。野口の真後ろに立つと、椅子越しに野口の頭と、手元にあるノートPCのディスプレイに内容が見えた。表示されていたのは、予想通り、あるSNSのやりとりだった。そのSNSは自分の考えを決められた文字数で投降できるものだった。

 眉間にしわがよるのを感じながら、俺は野口に問いかけた。

「その神様気取りの、一体どこが面白いんだ?」

「神様気取りじゃない。僕は、本物の『神』さ」

 野口の気が触れたというわけではなく、野口は本物の『神』だ。ただし、崇拝するのは日本のニートに限定されている。

 野口は、ただのニートではない。そして、ただのネオニートでもない。

 今やネット上のニートが崇め奉る、ニート狩りに合う前のニートに年金を恵む救世主。そんな、『神』の一人なのだ。

『神』は、複数人存在する。ニートたちにとっての『神』は、別に一人でなければならないというわけではないのだ。

 いや、むしろ複数の『神』がいてくれた方が都合がいい。その方が、自分が年金を恵んでもらえるチャンスが増えるのだから。

 だからニートたちはネット上のいたるところ、掲示板やSNSなどで『神』を求め続けている。

 誰か、救ってくれ!

 誰か俺に、手を差し伸べてくれ!

 誰か私を、この不安から連れ出してくれ!

 そんなニートたちの怨嗟の声に、悲鳴に、野口は耳を傾けているのだ。

 卑劣で、凄惨で、醜悪な笑みを浮かべながら。

「寄ってくる、寄ってくる。有象無象の無能どもが。我先にとはした金を手に入れるために、僕に媚びへつらってくる」

 世の中には、伊達や酔狂、一時の気まぐれで年金をニートたちに恵む者もいるだろう。

 だが、それでニート狩りを行うのが難しくなるようなことは、本来ならないはずなのだ。

 一体、誰が見ず知らずの他人に長い期間年金を、金を援助し続けれるというのだろう?

 しかし、依然としてニートたちに金を工面する『神』は存在し、『神』を続ける者もいる。そのおかげで、今回の任務で俺たちはまだ憲伸を狩れずにいる。

 職業支援が行き届いた今の日本だからこそ、弱い立場の者を、ニートたちに救いの手を差し伸べるような、自愛に満ちた精神が日本国民の中に育まれたのだろうか?

 そんなわけがない。

 当然だ。自分たちが豊かになった途端、ニート以外の国民はニート狩り法を逆差別と呼ぶような連中だぞ?

 そんな連中が、何故ニートのために金を使うというのだろうか?

 ありえない。

 ニートを支援するぐらいなら自分たちを支援してくれと、自分たちのほうこそ弱者何だと言うような連中がそんなことをするなんて、絶対にありえない。

 それでも、現に『神』は存在している。

 ありえない。

 これは、ありえないことなのだ。

 つまり、ありえないことが起こっているということは、ありえないことが発生した要因、理由があるということだ。

『神』は、『神』を続ける理由が存在するということだ。

 では、『神』の一人である野口が『神』を続けている理由とは、一体何なのか?

 その答えは、既に野口が自分の口で話している。


 面白い、と。


 そう。野口は、ニートに金をばら撒き、その金に踊らされるニートたちを見るのが、趣味なのだ。自分の金を求めて、同じ境遇のニート同士が争いあうのを、醜く蹴落としあうのを見るのが、何よりの楽しみなのだ。

「……下衆がっ!」

 俺が思わず零した声に、野口は振り向きながらくくっ、とくぐもった笑い声を出して、答えた。

「今更何を言ってるんだ、無辺。言っただろ? 面白い、って」

「俺も言ったはずだ。面白いのか? と。無造作にニートたちに金をばら撒いて、一体何が目的なんだ!」

「おいおい無辺。いくら長い付き合いだとはいえ、僕が全うに稼いだ金を僕がどう使うかについて口出しする権利はないんじゃないかなぁ?」

 俺と野口が知り合ったのは、特別国家公務員法が公布される前。俺たちがその頃から行っていた、ニートの支援活動中に出会ったのだ。

「何が長い付き合いだ。せいぜい一年とちょっとだろうが」

「つれないなぁ。君と僕の仲だろ?」

「どんな仲だよ」

「観測者と、観測対象さ」

「……どういう意味だ?」

「君に、興味があるってことさ」

 そう言って野口は、相変わらず人を食ったような笑みを浮かべながら、俺を上目遣いで見つめた。見つめられ俺は、野口の視線に自分の両目を射抜かれたような錯覚を得た。

 見つめられ、射抜かれ、そこから心の奥底まで覗き込まれそうになり、俺は思わず野口から目をそらした。

 そんな俺を見て、野口がまたくぐもった笑い声を上げる。視線をそらしているので野口が今どんな表情をしているのか俺にはわからないが、きっと嘲るように笑っているに違いない。

「……お前みたいな、ニートをもてあそぶようなやつに興味を持たれたって、薄気味悪いだけだ」

 俺はどうにか、搾り出すようにして野口に言い返すのがやっとだった。

 それをどう受け取ったのか俺にはわからないが、野口は視線をノートPCに戻した。

「言っているだろ、無辺。僕が自分の金をどう使おうが、僕の勝手だ。それに、金を払った分は僕を楽しませてくれなきゃ困る」

 野口は株価とFXの値動きが表示されている六枚のディスプレイを一瞥した後、ノートPCのキーボードに指を躍らせた。

「ニートはどいつも世間が冷たいとか、世の中は生きるには辛すぎるとわめいて、今の自分の現状の責任を、そこから逃げ出せない責任を他人の所為にしている。見てみろよ」

 俺は野口に促されて、ノートPCのディスプレイ、SNSに書き込まれたニートたちの意見に目を向けた。

 そこにはいかに自分が虐げられ、弱い存在なのか、現状を打破したくても打破できないのか、いかに自分が惨めな境遇にいるのかが赤裸々に記載されていた。

 自分という存在が、どれだけ可愛そうな存在なのかということを、懸命にアピールしていた。

 それでは、まるで……。

「まるで、物乞いだな」

 SNSというネット上での言葉のやり取りに、ニートたちが本心を語っているのかは分からない。それは直接会って話し、聞く他確かめようがない。

 だが、SNSでの野口とのやり取りを見ている限りでは、ニートたちに人間の尊厳なんてものがあるようには思えなかった。

 彼らニートが書き込んでいる内容はどれも、自分の存在を貶めるものばかりだったのだ。自分たちがいかに哀れな存在なのかをアピールし、他のニートよりも目立とうとしているのだ。

 何故目立つ必要があるのか?

 そんなものは決まっている。『神』から年金という施しを受けるためだ。

 彼らはネット上での、物乞いとなっていた。

 わざと自分の腕や足を切り落とし、同情を引こうとする物乞いのように。

 ニートたちは腕を切る代わりに、自分の人間としての尊厳を捨てたのだ。

 生活は出来ているはずなのに。

 そこまでしなくても、ニートは生きているはずなのに。

 外に出て働くのに比べれば、彼らにとって人間の尊厳なんて軽いものでしかなかった。

 働かなければならないのなら、人としての尊厳なんて、ドブに捨てれるのだ。

 そして尊厳を捨てた彼らは、もはや人ではない。獣だ。

 獣になった彼らが次に何をし始めるのか?

 他のニートを、けなし始めるのだ。

 自分だけを救ってもらおうと、他のニートを、同じような境遇のニートたちを、蹴落とし始めるのだ。

「くくくっ。いったいどれだけのニートが本当にその境遇から抜け出すために努力して、どれだけのニートが現状に甘えたまま自堕落にニート生活を続けたいのかは、僕は分からない。分かりたくもない」

 野口がSNSに、白々しくも言い争いを止めるようにメッセージを配信する。

 だがそれが逆に呼び水となり、ニートたちはより凄絶に、壮絶に、悲壮に言い争いを始めた。

『俺は高校でイジメられて以来外に出たことがない。そんな自分が働けるはずがない。だから俺を助けてくれ!』

『一度も働いたことがないのに、何適当なこと言ってんの?』

『やったことがないなら、ためしに働いてみればいいじゃない』

『世の中舐めんな。俺なんて上司のパワハラで会社を辞めたんだぞ。それ以来ニートを続けている。働くことが出来ないんだ。こんな可愛そうな俺は『神』に助けられるべきなんだっ!』

『会社辞めた後、引きこもっただけじゃねーか!』

『ちょwwwwお前も人のこと言wwwえwwwなwwwいwww』

『あいつらがいなければ、俺はこんな風にはならなかったんだ』

『いや、俺が助けられるべきっ!』

『何勝手なこと言ってるんだ! 俺は外に出るのも怖いんだぞ! そんな状況で、働けるわけねぇだろっ!』

『お薬出しときますねー』

『俺は精神科にかかってるんだ! 働けるわけがないっ!』

『治せばいいじゃん』

『もうこんな人生嫌だ』

『社会のゴミども。お前ら全員狩られちまえ!』

『まったく釣り針がでかすぎて困る。そんなんで『神』が救ってくれるわけねーだろ?』

『『神』よ! 俺を救ってくれっ!』

『ニートを語って、『神』から金を掠め取ろうというやつもいるからな。そう簡単に恵んではくれないでしょ』

『まったく困ったもんだ。俺のように本当のニートが助かる可能性が下がってしまうではないか』

『お前らちょっと黙ってろ。俺が『神』と話してるんだろうがっ!』

『俺だって、こんな人生変えれるのなら変えたいよっ!』

『俺は本当にニートだっ!』

『お前、偽者っぽい。俺こそ本物のニートだ』

『俺も俺も』

『これはチャンスなんだ。『神』が救済してくれれば、きっと俺は新しい自分に生まれ変われるっ!』

『弱い俺が救われるべきなんだ!』

『助けてっ!』

『恵んでくれっ!』

『年金を!』

『金をくれっ!』

『いいや、俺がっ! 虐げられ続けた人生を生きてきた俺こそがっ!』


 自分こそが、救われるべきなんだ。


「他人に虐げられたのが原因でニートから抜け出せない、というのが本当だったとしても、結局今度はニートたちは自分が助かるために自分が今までされてきた『自分以外の弱者を虐げる』ことをしている。そしてそんな自分が嫌いだなんだと、自己嫌悪に陥って、女々しくも悲劇のヒロインを気取るのさ。男女関係なく、ね」

 野口の言葉を聞きながら、俺は先月のニート狩りで出会った井上和枝と中村美律子のことを思い出していた。

 彼女たちは、自分たちが愉悦を感じるためだけにニートの井上一樹を使っていた。

 そして俺は、彼女たちが弱者であるニートを食いつぶすような行為に、嫌悪感を抱いた。

 だが今回は、その彼女たちと同じような行動をニート同士が行っている。

 自分たちが助かるために、都合のいいようにことを運ぶために、弱者を食らいあっている。

 自分と同じ、ニートを貪り食っている。

「まるで、蠱毒みたいだろ? ネットという器に閉じ込められた虫(ニート)たちが、互いに互いを食らいあう。ニート同士の共食いさっ!」

「……いや、蠱毒じゃない。蠱毒とは、決定的に違う点がある」

 嬉しそうに手を叩いて笑う野口に、俺は唇を噛み締めながら反論した。

「器(ネット)に閉じ込められた虫(ニート)は、『神』に依存しなければ生きていけない」

 蠱毒。

 大雑把に言えば、器に虫を詰め込み、最後に生き残った一匹の虫を使って誰かを呪う呪術のことだ。

 器に詰め込まれた虫たちは出口はなく、当然食べる餌もない。そのため器に入った虫同士で、共食いをするしか生き残る方法がない。

 だが、野口のような『神』に依存するネットのニートたちは、そもそも『神』の施しを受けなければ器(ネット)に存在できないのだ。

 野口は俺に告げる。

「そうさ無辺。その通りだ。そして僕は、そんな誰かに、『神』に無条件に庇護されると信じている、この有象無象どもの援助を突然辞めて、やつらの悲鳴を聞くのが大好き好きなのさ! あぁ、こうも簡単に人間の人生を壊せるなんて、最高だ。僕、イってしまいそうだよ……」

 野口は今、一心不乱にキーボードを叩き続けている。ニートたちに施しを行っているのだ。

 ニートたちが破滅へと向かう第一歩を、後押ししているのだ。

 野口の表情は、俺に背を向けているため分からない。

 だが蕩けたようなため息から察するに、今の野口は頬を赤らめ、他人の人生をぶち壊す快感に打ち震えていることだろう。

 野口がやっていることは、倫理的に許されるものではない。特にニートを狩る立場にある俺にとって、野口の活動はニート狩りの邪魔になる。本来なら、俺は野口の、『神』の活動を止めるべきなのだ。

 しかし、それは出来ない。

 民法第五百四十九条に、こうあるからだ。

『贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる』

 つまり、『神』からニートへの施しは合法なのだ。年金一年分なら贈与税もかからない。

 ニートが望んでいる限り、『神』の施しを俺が止める術はないのだ。

 ニートたちが破滅に向かっていると分かっているのに、今はただ黙ってみているしかないのだ。

 俺が歯を食いしばり、両のこぶしを握り締めている中、SNSでニートたちは次々に怨嗟の声を上げていく。

『何でニートだからってこんな目に合わなくちゃならないんだよぉ!』

『働きたくない。家から出たくない』

『自衛隊になんて死んでも入るか!』

『働くことに意味を見いだせない。そもそも自分以外のすべてに興味がない』

『そもそも特別国家自衛官って、普通の自衛官じゃないんだろ?』

『給料も普通の自衛官よりかなり低いらしいな。奴隷だよ。ド・レ・イ』

『今まで自分の好きなものにしか触れてこなかった。だから自分以外の世界との触れあい方が分からない』

『大体、何で国防に関わる仕事を日本人以外がやってるんだよ。おかしいだろ!』

『特に近くの国のやつらとなんかとは、仲良くなんてできっこないよ!』

『同じ日本人との触れあい方も分からないのに、外国人となんて分かり合えるわけがない』

『ガイジンに仕事を与えるために設備を作るぐらいなら、俺たちがニートを続けれるような政策をしろってんだ!』

『今から仕事をしろ? 冗談じゃない! 引きこもってもう十年。まともに人と話すらしてこなかった人間が、外に出るどころか、働くことなんてできるわけねぇだろうがっ!』

『今まで俺たちが外に出るチャンスも与えてくれなかったくせに、今無理やり連れ出そうとするなんておかしすぎるっ!』

「盗人猛々しいとは、このことだね」

 野口は失笑しつつ、ニートたちのやり取りを見ていた。

「こいつらが立ち直るきっかけなんて、昔から散々あったはずさ。自分の家族とも話す機会もあっただろうし、それこそネット上ではニートを続けることが不毛だと説く人も大勢いる」

 そこにタイミングを見計らったように、SNSでニートを非難する投稿がなされた。まるで野口の話に合わせているかのように。

 それに構わず、野口は喋り続ける。

 悪意のある言葉を、吐き続ける。

「ネットでニート同士傷の舐め合いをしていれば、必ずニートを非難する奴らが出てくる。その非難を一番初めに見たときには、確かに心に何か刺さったものがあったのかもしれない。でもこいつらは、それに耳を傾けない。何故なら口の達者な、自分以外の誰かが、ニートを非難するする意見に反論するからさ。さっそうと現れて、声高々と、ぐぬぬと言い返せない自分の代わりに反論してくれるわけだ。ニートにとって、自分にとって、都合のいい言葉を、やさしい言葉をかけてくれるわけさ。さも自分も同じニートの苦しみを背負っているかのようにね」

 そこでまた、野口の口が邪悪に歪む。

「そいつはニートじゃなくて、普通に働いて、家庭を持っていて、ニートの言うリア充というやつなのかもしれないのに。そもそもそんな口が達者な奴が、自分の意見をきちんと言えるやつが、どうして自分と同じニートだなんて思えるんだろうねぇ」

 野口はノートPCのディスプレイ越しに、ニートたちを見下していた。

 見下しながらも、野口はSNSで『神』として使っているアカウントとは別のアカウントで、自分で先ほど語った、口の達者な誰かとしてニートたちを擁護する書き込みをしていく。

 何も好きでニートたちはニートをやっているんではないんだと。

 本心では働きたいと思っている。だが身体的、精神的な問題で働くことが出来ないだけなんだと。

 その内容に、ニートたちはこぞって賛同し始める。

 ついにはニートを非難したアカウントが追い込まれ、ログアウトしてしまった。だがこのSNSには、アカウントが現在ログインしているかを示す表示は存在していない。

 では何故ログアウトしたと俺が分かったのか?

 決まっている。野口が目の前で、そのアカウントをログアウトしたのが見えているからだ。

 野口が話しているタイミングで、そう都合よくニートを非難するような投稿があるものか。全て野口の自作自演だ。

「こいつらは、何も考えていない。何もしていない。実行もしていない。現状を打破するための、行動なんてしちゃいない。自分が非難されていても、ただじっと黙って、誰か他の人がどうにかしてくれるのを待っているだけだ。だから、自分以外の誰かがそういう行動をとってくれると、直ぐにそれに乗っかるのさ」

 ものの見事に釣られたニートたちを見ながら、野口は満足そうに頷く。

「耳触りがいいから、それについて疑問に思わない。自分にとって都合がいい意見だから、その真偽について疑問を持たない。それで今自分が傷付かなくていいから、将来的に本当に自分が傷付かないかなんて気にもしない。だから自分が間違っていると薄々気が付いているにもかかわらず、自分が間違っていることを肯定する。間違い続けることを受け入れる。自分の都合のいい意見ばかりを取り上げる。それが自分に当てはまっていない、他人にとって都合のいい意見なのにもかかわらず、ね」

 話している最中に、野口はまた別のアカウントでログインし、今度は鬱病になって働けないニートとしてSNSの会話に参加し始めた。

 それに少なくない数のニートたちが、同調し始める。

「本当に鬱病なら、生活保護を受ければいいのに。そっちの政策だって、進めているのに。ねぇ?」

「……ああ」

 野口の言う通り、ニート狩り法の前身である低所得者自立支援法施行以降、生活保護受給の条件の引き下げや、生活保護の不当受給についての見直しなどが進められている。

 だが、それについてはあまり知られていないのが現状だ。

 テレビの報道などは低所得者自立支援法施行後に発生した、ある特別国家自衛官の自殺の件ばかり報道し、生活保護についての報道は一切されなかったのだ。

 もちろん生活保護に関して何も広報活動を行っていなかったわけではない。ニート狩り法施行以降、ニート狩り部隊での広報活動の一環としてニートを持つ家庭に生活保護についての話もしている。

 しかし、ほとんどの家庭で生活保護が使われることはない。生活保護を受けることに抵抗がある、と言って断られることがほとんどだ。

 だが本心としては、せっかく厄介払いが出来るチャンスがめぐってきたのにそのチャンスを手放すなんてありえない、と考えているのだ。

 これでは俺たちの周知活動も意味を成さない。

 では、ネットで広めるのはどうだろう?

 某掲示板のまとめサイトや、SNSなどを通じてこうした活動を広めることは出来ないのか?

 丁度今、野口が見つめるSNSで生活保護について法律の改正や俺たちの活動を伝えようとしている人の投稿があった。

『お前ら、本当に働けないなら生活保護を受けろ。受給基準も下がってるから、まずはこっちを試してみろよ』

 しかしその活動は、実を結ぶことはない。

『生活保護受ける前に、ニート狩りに合ったら元も子もねーだろうが!』

『そもそも、生活保護を受けれる確証なんてないだろ!』

『お前隣の国の工作員だろ。俺たちをニート狩りに合わせようと、デマを流してるんだ』

『そういえばニート狩り法も、その国の圧力で出来た法律みたいだな』

『今の政府最悪だな。売国奴しかいねーのかよ今の政治家は』

『あんなやつらに配慮する必要なんてねーだろうが!』

『そうだ! 俺たちの苦労は、同じニートじゃないと分からない!』

『俺たちは、次の瞬間にも狩られるかもしれないんだぞ! 悠長に生活保護を受けるのを待っていられるか!』

『さーて、『神』が通りますよ、っと』

『『神』降臨キター!』

『もう俺たちを救ってくれるのは、『神』しかいない!』

『もう日本の国士は『神』しかいない!』

『おk。任せろ。んで、お前らの住んでいる地域はどこら辺?』

 一瞬にしてニートは自分を救ってくれるかもしれない『誰か』の問いかけを無視し、『神』に縋りついた。

 傍から見れば、何故ニートは自分が助かるチャンスをどぶに捨てるのか? と考えるだろう。冷静に考えれば、その通りだ。

 でも、ニートたちは冷静に考えられない。

 何故ならニート狩りに自分が合うということは、親に自分が売られると言うことを意味している。

 自分の肉親にすら裏切られているのに、何故顔の見えない『誰か』に縋ろうと考えられるのだろうか?

 後ほんの少し待てば、生活保護を受けてニートを続けられる可能性があると、信じられるのだろうか?

 考えられるわけがない。

 信じられるわけがない。

 彼らに、ニートに信じられるのは、実際に縋れば金を恵んでくれる『神』だけだ。

 金だけなのだ。今ニートたちがネット上で信じることが出来るのは。

 だから、俺たちの声は届かない。それ故ニートたちは今もまた、立ち直るチャンスを潰すのだ。

 その様子を、自分以外の『神』の登場を見ていた野口は、皮肉下につぶやいた。

「まーたお隣の『神』サマがご降臨なさったよ。さっき自分たちがけなしたお隣さんに即効で縋りつくなんて。自分が一秒前に非難した相手に自分のニート生活が握られていると知ったら、こいつら一体どんな顔をするんだろうね」

「……気付いていたのか」

「まぁね。アカウントの紹介文とか、喋り方を見れば分かるでしょ」

『神』は日本以外の、特に日本の近隣諸国に繋がりが強い人間であることが多い。

 野口の言った通り、先ほどニートたちがあんなやつらと蔑んだ相手に、彼らは年金を払ってもらっているのだ。

 自分を助けてくれる相手なら、例えそれが非難していた相手であろうと、その正体は誰でもいい。ニートにとって、自分を救ってくれるのなら、相手は誰だっていいのだ。

「お前なら、『神』の目的も分かっているんだな」

「ああ。選挙権だろ?」

 俺の問いかけに、野口はさも当然といったように頷いた。

『神』は、『神』を続ける理由が存在する。

 野口の場合は、ニートを自分の娯楽にするために。

 では、他の『神』が『神』を続ける理由とは?

 それは、ニートが持つ選挙権。年金を納める義務があるニートの年齢は、当然二十歳を越えている。つまり、選挙権がある。『神』の目的は、この選挙権だ。

『神』はニートの年金を援助する代わりに、『神』が支援している政治家に票を入れるように言われるのだ。先ほど『神』がニートの住んでいる地域を聞いていたのは、そのためだ。

 先ほどSNSに降臨した『神』は、自分が支援している政治家が出馬している地域に住んでいるニートから優先的にニートたちへ援助を行っていく。

 そして『神』は、投票用紙に指定した政治家の名前を記入した写真を撮って後日写真を送るように強要していた。写真が送られなければ、援助を打ち切ることも付け加えて。当然ニートは、その条件を快諾する。

「それにしても、よく考えられていると思わないかい? 無辺」

 野口の言う通りだ。この『神』とニートの取引では、誰が『神』の指定した政治家に投票するのかを指定していない。

 つまり、ニートが自分で投票しに行かなくても、自分の両親に『神』からの要求通りに投票させても、『神』から提示された条件を満たすことが出来るのだ。

 そして『神』もそうなることを望んでいた。ニートの親が別の政治家に入れるはずだった一票を、『神』が推す政治家に一票投票することが出来るため、二票分の価値があるのだ。

 ニートにしてみれば、このまま自分がニートを続けれるかどうかの瀬戸際だ。両親が反対しようものなら、暴力沙汰もいとわないだろう。実際、そうした事件も発生している。ひょっとしたら、通報されていないだけでニートの言いなりになって投票をしている親もいるかもしれない。

 だが、一度この方法で年金を納め、ニートを続けれる権利を手に入れたニートは、もう『神』から逃れることは出来なくなる。

「こうして表向きは哀れな弱者(ニート)を救うと言う名の、金にモノを言わせた選挙活動は大成功を収めました、と。今のところはね」

 そう言って、野口はサーバにつながったキーボードとマウスを操作し、六枚のディスプレイを見つめた。いや、正確には株価と外国為替の値動きか。そこで俺は野口の行動の意味に気が付き、戦慄した。

「……お前、それにも気付いていたのか?」

「おや? 公表は近々なんだろ? 僕はてっきり、今日無辺はそのタイミングをリークしてくれるために来てくれたんだと思っていたんだけど。違ったのかい?」

 野口は言っていた。必要があれば、証券会社との取引をプログラムに任せず自分で操作すると。

 逆を言えば、必要がなければ自分で操作しないということだ。

 では、必要なときというのは、どういう場合なのか?

 それは、プログラムでは対処できないような値動きを株価と外国為替がするような場合だ。

 与党がニートを支援している『神』の目的と、『神』が支援している政治家の中に野党の中心人物であることを公表すれば、きっといくつかの銘柄はそのような値動きをするだろう。

「……知っていたとしても、お前なんかに教えるものか」

「もうそれが答えになっているんだけどね。無辺はニートが一人でも公職選挙法に違反しないように、わざわざ『神』の一人である僕を尋ねてきたんだろ?」

 その通りだった。

 言わずもがな、買収は立派な選挙違反だ。当然、買収されたニートにも罪が及ぶ。警察に捕まれば少なくても三年以下の懲役、若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金。親に無理やり票を入れさせていたとしても、何らかの処罰は免れないだろう。

 だが特別国家公務員になれば、四年間の従事期間を終えるまで、特別国家公務員を辞めることは出来ない。逆を言えば、ニート狩りに合えば、ニートは捕まることはないのだ。

 もちろんそれで罪が軽くなるというわけではないだろう。だが、真面目に勤めていれば減刑もひょっとしたらありうるかもしれない。少なくとも、罰金分の金なら貯めることも可能だろう。

 だから、時間がないのだ。

 野口が気付いているように、与党も『神』の存在とその目的に気付いており、それに関係する政治家のリストと証拠集めを行っていたのだ。リストの中には、大手流通グループが支援している野党の中心メンバーの名前もあった。

 これが、現在うるさくなった野党を黙らせる与党の切り札だった。

 ニート狩りに影響を及ぼすため、俺たちにはそのリストをいつ公表するか事前に知らされていた。その日付を野口は俺が訪ねてきたことから、近日中だと予測したのだ。

 そして、それは当たっていた。与党は来週、『神』の目的と正体、そしてその支援者を公表する予定だ。

 これが公表されれば『神』と関係している近隣諸国の外国為替と、『神』が支援している政治家とつながっている会社の株価に影響を与える。野口はまた、ニートを弄ぶための金を手に入れることになる。

 それに加え、『神』に買収されたニートたちの一斉検挙も始まるだろう。そうなれば、もう彼らを助けることは、俺には出来ない。

「もう、必要ないんじゃないかな?」

 俺の心の中を見透かしたように、野口は俺に背中を向けたまま告げた。

「もうニートを助けようだなんて、無駄なことを考えるのはよせ。あいつらはお前を必要としてない。そもそも、自分を助けようとする手を差し出されていることにすら気が付かないバカどもに、無辺が手を差し伸べてやる必要なんてないんだ」

 野口の声色は、ついさっきまでニートを貶していた人物とは思えないほど、慈愛に満ちたものだった。

 それだけで、野口が俺のことを気遣ってくれているのが分かる。

「あいつらは、一時の安心のために、自分たちがゆっくりと死んでいくことを選んだ。なら、そうさせてやればいい。それとも、いずれ死ぬしかないのなら、いっそ一思いに今殺してやった方が、」

「やめろっ!」

 それでも。

「分かってるんだよ、そんなこと。彼らが、ニートたちが俺を求めてなんていないってことぐらい、とっくに分かってるんだよ!」

 それでも、俺は……!

「それでも、それでもあいつらは、あの人たちは人間なんだ! 俺と同じなんだよ! 生きてても、いい人たちなんだよ!」

 それでも俺は、野口のように彼らを切り捨てることが出来ない。

 死んでもいい人だなんて、思えない。

 だって、彼らは、俺の……!

「まだ、引きずっているのか?」

 野口の声に答えようとして、けれども、俺の喉から言葉は一滴も零れることはなかった。

 野口の座っている椅子が回り、俺と目が合う。彼の視線に、俺は射抜かれた。

「もう、いいだろ?」

 彼は、何か眩しいものを見るかのように、目を細めた。

「無辺、僕の所に来い」

 野口の突然の申し出に、俺は一瞬反応できなかった。彼は、俺に向かって右手を差し出す。

「僕なら、お前をもっとうまく使ってやれる。お前の苦悩も忘れさせやれる。だから、僕の所に来い。無辺」

 今ここで野口の手を掴めば、きっと野口の言う通りになるだろう。

 今俺の抱えている悩みも何もかも忘れて、ニートを追い回す必要もなく、俺は今後充実した生活が送れるだろう。どう考えても、その方がこの世で生を受けた人間として、健全に生きることが出来る。

 でも。

「……申し出はありがたいが、俺は今の仕事を辞めるつもりはない」

 今ニート狩りを止めて、それまで狩ってきたニートに、俺は何て言えばいいんだ?

 お前たちを狩るのに飽きたから辞めたとでも言えと?

 無理だろ、そんなの。

 彼らは、死んでも俺を許さない。

 自分を狩った、俺を許さないはずだ。

 何故自分だけ狩ったんだと、俺を責めるはずだ。

 何故他のニートは狩らないのだと、俺を責めるはずだ。

 自分だけ狩られるなんて許せないと、俺を責めるはずだ。

 だから、俺は辞めれない。

 ニート狩りを一度始めた以上、もうニートたちから離れれないのだ。

『悪』は、滅びることは許されないのだ。

 それに。

「俺には『仲間』がいる。あいつらを裏切るわけには行かないんだ」

「ちっ。あの阿婆擦れどもか……!」

「おい! いくらお前でも、言っていいことと悪いことがあるぞ!」

「でも本当のことだろ? くそっ。僕が女だったら、僕の粘膜で無辺を虜に出来るのにっ……!」

 野口はそう言って、本当に悔しそうに俺に差し出していた右腕を椅子の肘掛に叩き付けた。微妙に野口の怒っているポイントが、ずれている気がする。

「まぁ、残念だけど今回は諦めるよ。でも、君なら僕はいつでも歓迎するよ、無辺」

「……そりゃどうも」

「それで? 野党潰しの件で着たんじゃないとすると、本来の用件はなんだったんだい? 無辺」

 そこで俺は、今回の送迎対象である川上憲伸について語った。

「もしお前が憲伸の年金を立て替えた『神』なら、それをやめてもらおうと思ったんだが」

「残念ながら、僕じゃないね」

「……そうか」

 だとすると、憲伸を狩るには今憲伸の両親が納めれる最大十一ヶ月分の年金と、新たに一ヶ月分年金を納めれるまで待ち、憲伸の両親に憲伸を特別国家自衛官にする権利を得てもらうしか方法がなくなってしまう。

 つまり、最短で来月まで憲伸を狩るのは御預けということになる。そうなると、憲伸と憲伸の両親どちらが年金を早く納めるのかという賭けになってしまう。

 それに来週には『神』の正体を与党が公開することになっている。最悪、逆上した憲伸が両親に危害を加えるケースも考えなければならない。

「おや? 何か変に難しいことを考えていないかい?」

 黙りこんだ俺を見かねて、野口はこんなことを言った。

「年金の受給っていつからか、知ってる?」

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