第10話 発送
僕は今、自宅近くのコンビニに居る。上手く早退に成功したというわけだ。途中、恐田に会わずに済んだのは幸いだった。担任は恐田だが、奴に申し出るとややこしくなりそうだったので僕は職員室に入って一番近くの先生に申し訳なさそうに謝りながら早退を申し出た。緊急事態だと告げるとその先生は何かを察したのか「
その後僕は家に帰り、
そして何重にもしたビニール袋に
完璧だ。これで慎重に扱ってくれるだろうし配送中の事故も起きづらくなるだろう。神社の住所も調べたし、後はこの
(よし、いくか……)
腹を決めた僕はコンビニのレジに向かう。もう11月に差し掛かり少し肌寒く感じる日も多くなってきたというのに、僕の着ているシャツはまるで天の川銀河のような無数の汗染みを浮かべていた。
僕がレジの前に立つと、近くで品出しをしていた年配の女性店員が受付をしに小走りで向かってくる。
「いらっしゃいませぇ」
店員が前に立ち、僕の緊張はピークに達していた。
「あ……あのっ……これを出したいんですが……!」
手が震えすぎて荷物をシェイクしているかの様になりながら、僕は何とかレジ台の上に荷を置く。すると店員がこちらを凝視してきた。
(しまった……もしかしてバレたか!?)
僕が動揺を隠せないでいると、店員は何かを尋ねてきた。
「ありがとうございますぅ。お荷物は元払いと着払い、どちらにされますかぁ?」
……どうやら僕の杞憂だったようだ。店員はただただいつもの流れで受付をしようとしているだけだった。極度の精神状態でどうも疑心暗鬼になっているな僕は。平静さを保たないと。だがしかし参ったな。迂闊だった。送料に関してはただ料金が幾らぐらいになりそうか、ざっと調べただけだった。
そうか……着払いも選択肢にあるのか。恐らく送料は千円前後は掛かるだろう。中学生である僕にとっては決して安くはない金額だ——しかし流石に着払いはないな。だって受取拒否されるリスクを考えたら危険すぎる。
僕が店員に元払いと伝えようとしたその時、
(いいえ。ここは着払いよ!)
……恐ろしいことをいうウンコだなコイツは。いや、正確には人間なのだがいずれにせよ無謀な提案をしてきているのは事実だ。
(
(大丈夫よ。
頑なに折れようとしない
(——お金のことはいいんだ
(違うのよ。そういうことじゃなくて私は着払いにしたときのメリットを考慮して勧めているのよ。考えてもごらんなさい? 奉納品と書かれた荷物を着払いで受け取り、いざ開封するとそこにはウンコが入っている。お金まで払ったのによ? 火に油を注げるのよ。着払いの方がより怒り狂うのよ。そうするとより早く、より確実に相手に殴り込ませることが可能になるの)
――元々この作戦の発案者は
「ではお客様ぁ、こちらの送り状に記入をお願いしますぅ」
そう言って店員が着払い用の伝票を手渡してきた。僕は事前に調べた情報をメモした紙を見ながら間違えないよう、正確に伝票に記入していく。その矢先だった。店員が荷物に顔を近付けながら、恐れていたことを口にした。
「ん?何かこの箱臭うぞぉ? 臭う! 臭うぞぉ! クンクン……」
窮地に立たされた僕は今まさにバレそうなことに焦るより、何故か店員の発したフレーズ、そして店員の口調そのものに既視感を覚えていた。
(この感じ……どこかで……)
そのときになり僕は初めてその店員のネームプレートを見た。……もっと早く見るべきだった。何故なら決して見過ごすことの出来ない情報だったからだ。そこにはこう書かれていた。
恐田と……。
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