第8話 方法
「
ふと、窓の向こうに目をやるとグラウンドから物音が聞こえてくる。
「ピーッピーッ、バックします」
それはバキュームカーが周りに気を
本当に呼んだのか……。のんびりしてる場合じゃないな。今度は両親が替えのパンツを持ってグラウンドに突入してくる前にさっさと決着をつけないと。
僕は慌てて
(貴方を救う方法……思い付いたわ)
(……ああ、それはさっき聞いた。だから方法の詳細を知りたいんだが?)
(その前に貴方は例えば今から転移しろと言われたとして、実際に出来るかしら?)
……
恐らく
僕は
(正直なところ、やり方が分からないから教えてくれ)
(分かったわ。転移のやり方はね、まず送り先のお尻を強くイメージするの)
(ああ、それで?)
(できるだけ精細にイメージするのよ。ホクロがあると思うならホクロの位置を、蒙古斑がありそうなら形まで想像する。ケツ毛が凄そうなら全部で大体1532本ぐらいかなとか、とにかく具体的にイメージすることが大事なの)
(そこまで!? それは大変そうだな……)
(そしてそのイメージが実物と2%以上一致してれば自動的に相手に転移される仕組みなの)
(……それもう誰でも送れるってことだろ!)
僕は驚愕した。
(2%って……合うだろ! 人の尻適当に想像してたら! 逆に2パー超えられない尻ってどんな尻だよ! )
(普通に存在するわ。例えばリンゴがよく似合うAIアシスタントとか)
(それはSiri‼ シリ違いだから‼ というか未来人の癖に詳しいな! そっちの時代にもまだあるのか⁉)
(さあ、それはさておき誰でも送れるというのは語弊があるわ。ちゃんとした条件が他にもあるのよ)
それを聞いて僕は落胆した。転移方法が意外と簡単そうだったので油断していたところにいきなり不意を突かれた様な心境だ。やはりそう上手くはいかないらしい。僕は覚悟をして
(まず前提として転移は人間以外にも可能よ)
そこは盲点だった。今思い返すと確かに人間のみだとは言及していなかった様な気はするが、説明を受け自分で勝手にそうなのだとばかり思い込んでしまっていた。
そうか……人間以外にも可能なのか。コイツはかなりの朗報だ。これで戦略の幅が一気に拡がる。どうやら心配は杞憂だったのかも……。
(安心するのはまだ早いわ。さっき言った他の条件……それはパンツを履いてるお尻に限られるということよ。 人間以外でパンツを履いてるお尻なんて……かなりレアケースよね?)
(かなりレアケースといっても……オムツを履かされてるペットとかも居るだろ?)
(オムツは駄目よ。あれはパンツとは認められないわ)
(何様だ‼ というかそもそも何でパンツを履いてないと転移出来ない仕組みなんだ!?)
(……あのね、考えてもみなさいよ。パンツ履いてないケツにウンコ転移したらどうなると思う? 地面に落ちるでしょ? そこに受け止めてくれるものがないから。地球が汚れるでしょ? 環境汚染に繋がるでしょ? それをウンコの神は激しく嫌うのよ)
(じゃあまずこんな呪いやめろ‼)
(それを私に言われても困るわ。じゃあ聞くけど仮にパンツを履いてないお尻に転移できたとしたら、貴方はそのままどこかの生き物に転移しちゃうわけ?)
……確かにそうだ。罪のない者にこの苦しみを味合わせたくないと僕はさっき心に決めたはずだ。
僕は教室の時計を確認した。時刻は9時45分を回ろうとしている。休み時間も残り半分を切ろうというところだ。ウンコの話だけにそろそろ巻きに入った方が良いだろう。
(なあ
(そうね……そういえばウンコの神ってどんな姿をしていると思う?)
(また唐突な……。そうだな、一般的には神様というと人間に近い姿をしてるイメージがあるけどな。まあウンコの神だから茶色いアレの姿をしているのも想像してしまうが)
(じゃあ次の質問。ウンコの神はどんな服装をしてると思うかしら?)
(神社で祀られてるぐらいだからなあ。着物な気がするが……でもかなり丁寧な口調の神だったな。そう、まるで執事の様な喋り方だった。意外と西洋風の燕尾服みたいな恰好だったりしてな)
(それじゃあ最後の質問ね。ウンコの神は一体どんな下着を履いてると思う?)
(ま……まさか
(ええ。そのまさかよ。送りつけてやるのよ……奴にね)
度肝を抜く提案に僕は頭が真っ白になった。どのくらいかといえば、それは新品で買ったばかりのブリーフよりも純白に満ち溢れていたものだった……。
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