第2話 あしもと

世の中には

うっかりやっちまった

ってなことがありまして


先日私も

箪笥の角にですね

その、足の小指をですね…


あれ痛いんですよねぇ


あんなに

小さな形(なり)してますが

あれで神経が細やかでねえ

私みたいに


え、聞いてない?

まあそれは置いといて…


いつも

何気無しに行く道が

普段よりずっと長くね

感じられる訳ですよ


ほら

怪我してるから


え、小指ぶつけたくらいなら

すぐ直るだろうって?


ええ、ええ

そうなんですけどね


その前に

向う脛もぶつけてまして


こう

棚の物を取ろうとして

立ち上がりますでしょう


で、足元見てませんから

がんっと


まあ、そんなこんなで

不自由すると言いますか


そこで初めて思うんですよ


怪我の無いことの

何と有難いことかと


ああ、何人か頷いて下さって

ええ、ええ、ね?


親にもらった大事な体

丁寧に扱わないといけません


あなたも、私も

一つきりしかありませんから


お互い怪我の無いように

あったら助けられるように…


とは言え

人は勝手な生き物ですから

元気な時には

無頓着になるもので…


わかよ

「おいおい

 まだ終わってないのかい」

ぬるを

「すみません…」


わかよ

「すみませんじゃないよ

 一体いつまで待たせるんだい」

ぬるを

「月末までには…」


わかよ

「アンタ、この間もそう言って

 結局遅れたじゃないか」

ぬるを

「…すみません」


わかよ

「ああ、もういいよ

 アタシがやっとくから」

ぬるを

「すみません…」


わかよ

「その口癖!

 いつ治るんだいお前さん」

主治医

「全身を打っていますから

 一か月は絶対安静

 その後様子を見ながら

 リハビリを」


…いや、そういう話じゃなくて


いわお

「何だこの成績は!

 やる気あるのか!」

(ボードを叩く音)

えどり

「すみません…」


いわお

「すみませんじゃないよ!

 一日回ってたったの3件?

 ふざけてんのか!」

(書類の束で頭を叩く音)

えどり

「すみません…」


いわお

「先月もその前も

 そうだったよなお前

 俺の立場

 悪くしようってのか!?」

(物凄い顔で睨む)

えどり

「いいえ…」


いわお

「じゃあ

 何なんだこの数字は!」

(書類の束でボードを叩く音)

えどり

「すみません…」


いわお

「いつもいつも小さな声で

 ぼそぼそ喋りやがって…

 やる気ねえんなら

 やめちまえ!」

(書類を机に叩きつける音)

えどり

「すみません…」


いわお

「何か言ってみろよコラ!」

(机を蹴った音)

えどり

「・・・」



☆  ☆  ☆



わかよ

「はい、替えの下着」

ぬるを

「すみません」


わかよ

「隣の人、骨折かい?」

ぬるを

「机に脚をぶつけたとかで」


わかよ

「まだ若いのにねえ」


いわお

「・・・」



☆  ☆  ☆



因果応報というお話…











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