唯心の償い旅――傷の少女編
間章-傷の少女
間章
少女は森の中を逃げていた。
ある男から渡された生き延びるたの食料をもって、ただひたすら所在なく――運命もしらず、無計画のまま。
裸足の脚に木の枝や小さな石ころが突き刺さるたびに神経が跳ねるような激痛――走るたびに術後の胸の傷が歪み精神を断とうとする。
でも、今捕まれば二度とこのようなチャンスはないとわかっていた。
約十年間の無意味だった日々に別れを告げる。
自分のそれからの運命は自分で決めたい!
そして、たどり着いた場所は一つの海岸。
どうやら、後ろにはもう追手はいないことを確認すると、膝から今までのりきみが解ける感覚に襲われる。
少女は自由と共に、この夕日に染まった開放的な空をもう一度見た。
一度も見たことのない絶景に心が奪われた。
――ココで死ねたら……どんなに気持ちいいかな?
少女は思う。
私の人生になんの意味もない。
そして、この先を生きたから実験道具として生きていくのが始末。
だったら、ここで私の人生を終わらせて、いっそ命の綱から解放されたい。
だけど、そう思って海岸の岩の先っぽまで歩いているときだ。
身体中から痛みにも似た悲鳴。
もし、そこから落ちたら、命が切れたら、痛いという単純な警告が押し寄せる。
さっきとは違う理由で脚が竦む。
そうだ、死ねないよ……。
竦んだ身体を抱き締めた。
まだ、熱がある。
ふと、大好きだった妹を思い出す。
もう何十年も会っていなかった自身とそっくりな妹の存在。
――私だけでもいきなくちゃ……
そう、行き場のない気持ちに終止符を打った――そのときだ。
「――ああああああああああ」――という叫び声が木霊する。
少女は驚き唖然とした目を少年に向けた。
そして、彼は少女が越えれなかったボーダーを越そうと……している。
それが、少女には許せない。
今さっき少女はなんども心に読み返したことだ。
生きていれば、どうにか幸せが掴める。
この雄叫び少年が今からしようとしていることは間違っている。
気がつけば、その脚がこのよくわからない少年へと向かう。
それが、少女の物語の始まりであった。
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